測った電圧と電流を、どの条件の値として使うか。変圧器の計算では、この確認が答えを左右します。短絡試験の電流が定格の半分なら、その電圧をそのまま%インピーダンスに使うことはできません。効率でも、負荷を減らした割合を損失にそのまま掛けると答えが変わります。
この回は、無負荷試験、短絡試験、進み力率の電圧変動率、部分負荷の効率、最大効率を5問で確かめます。まず自分で計算してから「解答を見る」を押してください。選ばなかった選択肢にも、計算のどこが違うのかを説明しています。
5問とも当サイトの作問で、数値は学習用の架空設定です。各問は別の変圧器を扱います。式の導出や回路図から確認したい場合は、変圧器の等価回路と計算を先に読めます。
記号と試験の読み方
電圧と電流は実効値です。V は電圧 [V]、I は電流 [A]、P は有効電力 [W] を表します。定格容量 Sn は皮相電力で、単位はV·A(VA)またはkV·A(kVA)。力率は、皮相電力のうち有効電力となる割合です。添字0は無負荷、nは定格を表します。
| 試験 |
与える条件 |
主に分かるもの |
無負荷 試験 |
片側を開放。給電側に定格電圧・定格周波数。 |
無負荷損と励磁回路の値。 |
短絡 試験 |
片側を短絡。定格周波数で電圧を低い値から調整。 |
巻線を合わせた抵抗・漏れリアクタンス、負荷損。 |
短絡試験では、どの側で何Aを流したかも読みます。定格電流にしたときの測定値なら、その電圧を同じ側の定格電圧で割り、100を掛けて%インピーダンスにできます。第2問では、途中の電流で測った値から考えます。
第1問|無負荷電流の内訳
単相変圧器の二次側を開放し、一次側に定格周波数・定格電圧300 Vを加えた。一次側で測った無負荷電流は0.50 A、入力電力は90 Wだった。
巻線抵抗での電圧降下と銅損、その他の損失を無視し、入力電力を鉄損とみなす。電流波形のひずみも無視し、無負荷電流を、電圧と同相の鉄損電流と、電圧より90°遅れる磁化電流に分ける。磁化電流の大きさ [A] はどれか。
- (1)0.20 A
- (2)0.30 A
- (3)0.40 A
- (4)0.50 A
- (5)0.80 A
正解:(3)0.40 A
電力計で測るのは、有効電力です。ここでは90 Wを鉄損とみなすので、電圧と同相の鉄損電流 Ic を先に求めます。
鉄損電流
Ic=90/300=0.30 A
磁化電流 Im は、この鉄損電流と90°ずれています。直流回路のように、大きさを足したり引いたりすることはできません。2つを直角三角形の辺、合成した無負荷電流 I0 を斜辺として扱います。
I02=Ic2+Im2
Im=√(0.502−0.302)
=√0.16=0.40 A
- (1)0.20 A:0.50−0.30 と引いた値です。0.50 Aは2成分の算術的な合計ではありません。位相差があるため、2乗の関係を使います。
- (2)0.30 A:90/300 で求まるのは鉄損電流です。磁束を作る側の電流とは役割が違います。
- (3)0.40 A:鉄損電流と直角に合成すると、無負荷電流0.50 Aになる値です。0.302+0.402=0.502 と確かめられます。
- (4)0.50 A:無負荷電流の全体です。鉄損電流まで磁化電流に含めています。鉄損をゼロとする問題なら両者は一致しますが、今回は90 Wの入力があります。
- (5)0.80 A:0.50+0.30 と足した値です。無負荷電流に既に含まれている成分を、もう一度足しています。
等価回路へ戻すと、鉄損抵抗は Rc=300/0.30=1,000 Ω、励磁リアクタンスは Xm=300/0.40=750 Ω。両方に同じ電圧がかかる並列の枝です。抵抗は鉄損を、リアクタンスは磁束を作る働きを表します。
二次が開放でも、給電した一次側の電流はゼロではありません。実物には、その小さな電流による巻線の銅損もあります。「銅損を無視する」は計算上の近似で、「銅損が存在しない」と同じではありません。また、実際の無負荷電流には高調波が含まれるので、本問は波形のひずみを無視する条件を付けています。
第2問|途中の短絡試験値
定格容量54 kV·A、定格電圧4,500/225 Vの単相変圧器がある。二次側を短絡し、一次側から定格周波数で試験したところ、一次電流6.0 Aのとき一次電圧135 Vだった。
励磁電流を無視し、試験中の温度と短絡インピーダンスは一定とする。この変圧器の%インピーダンス [%] はどれか。
- (1)0.060%
- (2)1.5%
- (3)3.0%
- (4)6.0%
- (5)60%
正解:(4)6.0%
まず、6.0 Aが定格電流かどうかを確かめます。単相では、容量をその側の電圧で割れば定格電流です。54 kV·Aを54,000 V·Aに直して計算します。
一次定格電流
I1n=54,000/4,500=12 A
試験電流6.0 Aは定格の半分でした。インピーダンスが変わらなければ、電流を2倍にする電圧も2倍です。定格電流を流すための一次電圧は、
135×(12/6.0)=270 V
したがって
%Z=270/4,500×100
=6.0%
別の求め方では、一次側で測ったインピーダンスは Z=135/6.0=22.5 Ω。定格電流12 Aを掛ければ270 Vになるので、同じ結果です。Ωで求めても、最後には同じ側の定格電流・定格電圧を使います。
- (1)0.060%:270/4,500=0.060 までで止めた値です。比の0.060を百分率にするには100を掛けます。0.060と6.0%は同じ比ですが、0.060%は違います。
- (2)1.5%:135/4,500×100=3.0% を、さらに2で割っています。試験電流を6 Aから定格12 Aへ増やすので、電圧は半分ではなく2倍にします。
- (3)3.0%:135 Vをそのまま使った値です。これは定格の半分の電流に対応する割合で、定格電流を基準にした%インピーダンスではありません。
- (4)6.0%:定格電流にそろえた電圧270 Vを、一次定格電圧4,500 Vで割り、百分率に直した値です。
- (5)60%:135/225×100 とした値です。一次側の試験電圧と二次側の定格電圧を組み合わせ、さらに電流の補正も省いています。
二次側に換算しても確認できます。巻数比は a=4,500/225=20 なので、二次側のインピーダンスは 22.5/202=0.05625 Ω。二次定格電流は 54,000/225=240 A です。0.05625×240=13.5 V を225 Vで割って100を掛けると、同じ6.0%になります。Ω値は換算する側で変わりますが、基準もそろえれば百分率は変わりません。
短絡試験の電力計が示す値は、その試験電流での負荷損にほぼ相当します。6 Aでの電力を、そのまま12 Aでの定格負荷損とすることもできません。抵抗が一定なら、電流2倍で抵抗損は4倍です。
第3問|進み力率と電圧
ある変圧器の定格電流における百分率抵抗降下は0.8%、百分率リアクタンス降下は2.6%である。定格電流、力率0.80の進み負荷での電圧変動率 [%] を、一次近似で求めるとどれか。
励磁電流の影響と電圧降下の高次項を無視する。進みの位相角の大きさを θ とし、sinθ=0.60 とする。
- (1)−2.20%
- (2)−0.92%
- (3)+0.64%
- (4)+0.92%
- (5)+2.20%
正解:(2)−0.92%
抵抗分には力率cosθを掛けます。リアクタンス分にはsinθを掛け、進み負荷ではその項を引きます。ここではsinθを正の大きさとして与えているため、式の側にマイナスを置きます。
進み負荷の一次近似
ε≒%Rcosθ−%Xsinθ
=0.8×0.80−2.6×0.60
=0.64−1.56=−0.92%
- (1)−2.20%:抵抗分もリアクタンス分もマイナスにした値です。進み負荷だからといって、両方の符号を反転するわけではありません。
- (2)−0.92%:正の抵抗分0.64%より、差し引くリアクタンス分1.56%の方が大きいため、負の値になります。
- (3)+0.64%:抵抗分だけです。力率1ならsinθが0になりますが、本問は力率0.80なので、リアクタンス分を省けません。
- (4)+0.92%:計算結果の絶対値を取っています。電圧変動率の符号には意味があり、勝手に正に直すことはできません。
- (5)+2.20%:0.64+1.56 と足した値です。同じ力率の遅れ負荷なら、一次近似でこの値になります。
電圧変動率は、所定の力率で定格電流を流し、二次端子電圧を定格値 V2n にした状態から、一次電圧・周波数を維持して無負荷にしたときの変化を表します。無負荷の二次電圧を V20 とすると、
ε=(V20−V2n)/V2n×100
分母は定格負荷時の二次電圧です。負の変動率なら、無負荷の電圧の方が低いという意味です。たとえば二次定格電圧を250 Vとすれば、本問の近似では 250×(1−0.0092)=247.7 V が無負荷電圧になります。負荷を外すと必ず電圧が上がる、とは限りません。
この−0.92%は、指定された一次近似での答えです。リアクタンスの影響が消える条件や、より正確な式まで確認したい場合は、変圧器の等価回路と計算の電圧変動率の節へ戻れます。
第4問|部分負荷の効率
定格容量64 kV·Aの変圧器で、無負荷損は125 W、定格電流での負荷損は1,024 Wである。二次電圧を定格値とみなし、負荷率0.625、力率0.80で運転するとき、効率 [%] に最も近いものはどれか。
負荷率は二次電流/二次定格電流。電圧と周波数は一定で、無負荷損は負荷率によらず一定、負荷損は負荷率の2乗に比例するものとし、その他の損失は考えない。
- (1)96.53%
- (2)97.67%
- (3)98.36%
- (4)98.39%
- (5)98.70%
正解:(4)98.39%
出力、実際の負荷損、入力の順で計算します。容量のkV·Aは、そのまま有効電力のkWにはなりません。負荷率を掛けて実際の皮相電力にし、さらに力率を掛けます。
出力
64×0.625×0.80=32 kW
=32,000 W
この負荷での負荷損
0.6252×1,024=400 W
損失の合計
125+400=525 W
入力
32,000+525=32,525 W
効率
η=32,000/32,525×100
≒98.39%
- (1)96.53%:部分負荷でも定格負荷損1,024 Wが生じるとして計算しています。電流が下がるので、負荷損も小さくなります。
- (2)97.67%:負荷損を 0.625×1,024=640 W とした場合の値です。負荷率は1回ではなく、2乗して掛けます。
- (3)98.36%:(1−525/32,000)×100 とした値です。「1−損失/入力」なら効率ですが、ここでは損失を出力で割っています。差は小さくても、分母の定義が違います。
- (4)98.39%:出力と損失を同じW単位にそろえ、出力を入力で割った値です。入力は負荷へ渡す32,000 Wに、変圧器内で失う525 Wを足したものです。
- (5)98.70%:力率を掛けず、出力を40,000 Wとして計算した値です。64×0.625=40 kV·A は皮相電力で、力率0.80での出力は32 kWです。
負荷損の主成分は巻線の銅損ですが、厳密には漏れ磁束などによる漂遊負荷損も含みます。同様に、無負荷損も主成分は鉄損ですが、鉄損そのものと完全に同じではありません。本問は測定された損失の分類を使い、2乗で変化するというモデルを問題文で指定しました。
第5問|最大効率の負荷
無負荷損225 W、定格負荷損625 Wの変圧器を、電圧・周波数・力率一定で運転する。力率は0より大きく、二次電圧の変化を無視できるものとする。
無負荷損は一定、負荷損は負荷率の2乗に比例し、その他の損失は考えない。負荷率を0より大きく1以下の範囲で変えるとき、効率が最大になる負荷率はどれか。
- (1)0.36
- (2)0.60
- (3)1.00
- (4)約1.67
- (5)約2.78
正解:(2)0.60
最大効率になるのは、その負荷で生じる負荷損が無負荷損に等しいときです。定格負荷損625 Wをそのまま225 Wと比較するのではなく、負荷率 m の2乗を掛けます。
625m2=225
m2=225/625=0.36
m=√0.36=0.60
60%の電流で、負荷損は 0.602×625=225 W。無負荷損と一致し、指定された0〜1の範囲にも入っています。
- (1)0.36:損失の比を求めたところで止めています。0.36は負荷率の2乗なので、負荷率に戻すには平方根を取ります。
- (2)0.60:その負荷での負荷損と無負荷損が一致する値です。定格いっぱいまで流した状態ではなく、部分負荷で最大になります。
- (3)1.00:全負荷で最大と決めつけています。この条件では、全負荷の負荷損625 Wが無負荷損225 Wより大きく、既に最大効率点を越えています。
- (4)約1.67:√(625/225) と比を逆にした値です。負荷率を上げると負荷損はさらに増えるため、225 Wに近づける向きになりません。指定された範囲も越えます。
- (5)約2.78:625/225 と逆の比を取り、平方根も省いた値です。損失の比そのものを、運転すべき負荷率とはできません。
損失最小との違い
このモデルでは、電流を減らすほど損失の合計も減ります。しかし、出力も減るので、損失が小さい運転点が、そのまま効率の高い運転点になるわけではありません。無負荷では出力は0 Wで、225 Wの入力がすべて損失になるため、効率は0%です。
定格容量 Sn をV·A、無負荷損 P0 と定格負荷損 Pkn をWで表すと、効率を決める出力は mSncosθ、損失は P0+m2Pkn。効率の分子と分母を m で割ると、変わる部分は P0/m+mPkn になります。
この2項の積は P0Pkn で一定です。和が最小になるのは2項が等しいときなので、P0=m2Pkn が得られます。力率を一定にして負荷だけを変えることが、この考え方の前提です。負荷率とともに力率も変わる場合は、各運転点の出力と損失から比較します。
計算前にそろえるもの
| 計算 |
確認すること |
無負荷 電流 |
同相成分と90°遅れ成分を、大きさだけで足し引きしない。 |
%インピー ダンス |
定格電流に対応する電圧か。分母の定格電圧と測定側が同じか。 |
電圧 変動率 |
進み・遅れで符号が変わる。定義の分母は定格負荷時の電圧。 |
| 効率 |
出力と損失の単位を統一。分母は出力に損失を足した入力。 |
| 最大効率 |
定格の負荷損ではなく、その負荷での負荷損と無負荷損を比べる。 |
復習と次の演習
解説の確認先
問題文・数値設定・選択肢・表は、このページ用に作成しました。技術的な定義と計算の前提は、次の一次資料で確認しています。
資料の確認日:2026年10月9日。資料の問題文や図は転載していません。このページは試験学習用で、設備で短絡試験を行う手順を示すものではありません。
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