変圧器の計算では、比の向きと、比べる相手を確かめましょう。二次電圧を出すときの巻数比、一次電流を出すときの巻数比、V結線で容量を比べるときの分母。この3か所を取り違えると、式を覚えていても答えが変わります。
この回は、起電力の変化を1問、巻数と電圧・電流を2問、V結線を1問、並行運転を1問扱います。5問とも当サイトの作問です。各問で答えを選び、「解答を見る」を押して、選ばなかった4つの説明も確かめてください。
式の成り立ちから読みたい場合は、変圧器の構造と原理を使ってください。第2問と第3問は同じ変圧器を扱い、二次の電圧を求めたあと、抵抗をつないで一次の電流まで追います。数値はこの演習のための設定で、製品の仕様を表すものではありません。
記号と計算の前提
N1・N2 は一次・二次の巻数、V1・V2 はそれぞれの端子電圧、I1・I2 はそれぞれの電流です。電圧と電流は実効値の大きさを使います。巻数比は a=N1/N2 と定義します。一次とは電源をつなぐ側で、いつでも高圧側を指すわけではありません。
| 計算 |
使う関係 |
成り立つ 条件 |
| 起電力 |
E=4.44fNΦm |
磁束が 正弦波 |
| 二次電圧 |
V2=V1/a |
理想 変圧器 |
| 一次電流 |
I1=I2/a |
理想 変圧器 |
V結線の 容量 |
SV=√3S0 |
同一定格 2台・ 平衡負荷 |
E は誘導起電力の実効値 [V]、f は周波数 [Hz]、N は巻数、Φm は磁束の最大値 [Wb] です。S0 は単相変圧器1台の定格容量、SV はV結線で供給できる三相全体の皮相電力。皮相電力は電圧と電流の大きさから求める量で、単位は V·A(VA)、その1,000倍が kV·A(kVA)です。
第2問・第3問の「理想変圧器」では、巻線の抵抗、漏れ磁束、鉄損、励磁電流を考えません。第4問も電圧降下と損失を無視します。第5問だけは、巻線側のインピーダンスを含めた実際の変圧器の関係を問います。
第1問|起電力の変化
ある巻線に鎖交する磁束は正弦波で変化している。巻数はそのままに、磁束の周波数を元の1.25倍、磁束の最大値を元の0.80倍にした。巻線に生じる誘導起電力の実効値は、元の何倍になるか。
- (1)0.64倍
- (2)0.80倍
- (3)1.00倍
- (4)1.25倍
- (5)1.5625倍
正解:(3)1.00倍
正弦波の磁束から生じる起電力は E=4.44fNΦm で求めます。変更後と変更前の比を取ると、共通の係数4.44と、変えていない巻数が消えます。
起電力の比
=周波数の比×磁束の最大値の比
=1.25×0.80=1.00
磁束の振れ幅が小さくなる効果を、変化が速くなる効果がちょうど埋め合わせるので、起電力は変わりません。
- (1)0.64倍:0.80/1.25 とした値です。周波数を高くすると、同じ時間内の磁束の変化が速くなるので、周波数の比は掛けます。
- (2)0.80倍:磁束の最大値だけを反映しています。周波数も変わったという条件が抜けています。
- (3)1.00倍:両方の変化を掛け合わせた結果です。磁束が減ったことだけで「起電力も下がる」とは判断できません。
- (4)1.25倍:こちらは周波数だけを反映した値です。磁束の最大値が一定の場合なら、この倍率になります。
- (5)1.5625倍:1.25/0.80 として、磁束の比を逆向きに使っています。起電力は、磁束の最大値に反比例する量ではありません。
電圧を一定にした場合とも区別します。同じ巻線に一定の交流電圧を加え、巻線での電圧降下を無視すれば、周波数を1.25倍にしたときの磁束の最大値は 1/1.25=0.80倍 になります。本問は、磁束の変化を与えて起電力を確かめる向きで出題しました。
鉄心の材質は、この起電力の式の変数にはありません。ただし、材質が変われば同じ磁束をつくるための磁化電流や鉄損は変わり得ます。「式に出てこない」ことを「変圧器の働きに関係しない」と読み替えないでください。磁束の変化と電圧の関係は、電磁誘導とインダクタンスにもつながります。
第2問|二次側の電圧
単相の理想変圧器で、一次巻線は1,170回、二次巻線は65回である。一次側に実効値4,320 Vの正弦波交流電圧を加えた。二次端子の電圧 [V] として、最も近い値はどれか。
- (1)80.0 V
- (2)240 V
- (3)416 V
- (4)4,320 V
- (5)77,760 V
正解:(2)240 V
2つの巻線は共通の磁束を受けるので、1回巻きあたりに生じる起電力が同じです。二次の巻数が一次より少ないため、二次電圧も小さくなります。
巻数比
a=1,170/65=18
二次電圧
V2=4,320/18=240 V
巻数比を挟まず、4,320×65/1,170 としても240 Vです。どちらの計算でも、元の電圧に掛けるのは「二次の巻数/一次の巻数」です。
- (1)80.0 V:240 Vを、さらに3で割った値です。単相変圧器1台なので、3相に分ける計算はありません。
- (2)240 V:巻数が18分の1なので、電圧も18分の1です。240×18=4,320 と逆算できます。
- (3)416 V:240×√3≒416 とした値です。Y結線で相電圧から線間電圧を出す関係を、この単相の問題へ持ち込んでいます。
- (4)4,320 V:巻数が同じ場合の値です。ここでは一次1,170回に対し二次65回なので、等しい電圧にはなりません。
- (5)77,760 V:4,320×18 として比を逆に使った値です。巻数の少ない側に、かえって高い電圧が出る計算になっています。
電圧の比には向きがあります。「巻数比を掛ける」とだけ覚えず、求める側の巻数を分子に置くと整理できます。一次電圧を二次電圧から求めるなら、この問題とは逆に18を掛けます。
第3問|負荷と一次電流
第2問と同じ単相の理想変圧器(巻数比18、一次4,320 V、二次240 V)の二次端子に、40 Ωの抵抗だけをつないだ。一次側の電源から流れ込む電流 [A] として、最も近い値はどれか。
- (1)0 A
- (2)0.0185 A
- (3)0.333 A
- (4)6.00 A
- (5)108 A
正解:(3)0.333 A
最初に、抵抗へ流れる二次電流をオームの法則で求めます。そのあと一次側へ移します。
二次電流
I2=240 V/40 Ω=6 A
一次電流
I1=6/18≒0.333 A
巻数の多い一次側は、電圧が18倍になる一方、電流は18分の1になります。この抵抗負荷では力率が1で、理想変圧器には損失がないので、電力からも確認できます。
負荷で使う電力
240 V×6 A=1,440 W
電源からの電流
1,440 W/4,320 V≒0.333 A
- (1)0 A:理想変圧器自体の損失がゼロでも、つないだ抵抗は電力を消費します。負荷に渡す1,440 Wは、一次側の電源から供給されます。
- (2)0.0185 A:6/18² と、巻数比で2回割った値です。電流を換算するときは18で1回割ります。比の2乗が現れるのは、抵抗などのインピーダンスを反対側へ換算するときです。
- (3)0.333 A:正しい一次電流です。電力を比べる計算と、巻数比で電流を変換する計算の両方で一致します。
- (4)6.00 A:二次の抵抗に流れる電流です。電流計をどちら側へ入れた場合の値か、区別してください。
- (5)108 A:6×18 として、電流を電圧と同じ向きに増やしています。これでは、理想変圧器の入力電力と出力電力が一致しません。
「電圧を下げれば電流が増える」は、同じ変圧器の一次と二次を比べる説明です。負荷を外しても二次に6 Aが流れる、という意味ではありません。二次電流は負荷で決まり、それに必要な電力を一次から受け取ります。実際には無負荷でも励磁電流が流れますが、本問では無視しています。
電流と抵抗で巻数比の使い方が違う理由は、次の解説記事変圧器の等価回路と計算で扱います。
第4問|V結線の容量
定格容量45 kV·Aの同じ単相変圧器2台を、V結線で使う。各巻線には定格電圧がかかり、平衡した三相負荷の力率は0.90である。各巻線の定格電流を超えずに供給できる、三相全体の最大の皮相電力 [kV·A] として、最も近い値はどれか。電圧降下と損失は無視する。
- (1)45.0 kV·A
- (2)52.0 kV·A
- (3)70.1 kV·A
- (4)77.9 kV·A
- (5)90.0 kV·A
正解:(4)77.9 kV·A
V結線では、各変圧器の二次巻線の電圧が線間電圧に等しく、巻線の電流も線電流の大きさと等しくなります。平衡三相の皮相電力 √3×線間電圧×線電流 に当てはめると、1台の容量の√3倍になります。
SV=√3×45≒77.9 kV·A
ここで力率0.90を掛けると、抵抗分で実際に消費される有効電力になります。今回の問いは皮相電力なので、掛ける手前で止めます。
有効電力を求める場合
√3×45×0.90≒70.1 kW
- (1)45.0 kV·A:1台分の定格容量です。V結線で三相へ供給する全体の容量には√3を掛けます。
- (2)52.0 kV·A:2台の合計90 kV·Aに、1/√3≒0.577 を掛けた値です。0.577は、同じ変圧器3台でΔ結線にした容量と比べるときの係数です。分母となる台数を混同しています。
- (3)70.1 kV·A:力率まで掛けた数値です。その計算結果の単位はkWで、問われた皮相電力の値ではありません。
- (4)77.9 kV·A:平衡負荷で2台とも定格電流に達したときの、三相全体の容量です。
- (5)90.0 kV·A:45×2 と単純に足した値です。V結線で三相へ出せる容量は、この合計には届きません。これは損失を差し引いたためではなく、結線で決まる電圧・電流の関係によるものです。
86.6%と57.7%
2つの割合は、分子が同じでも分母が違います。この問題の45 kV·Aを使って並べます。
比べる 相手 |
計算 |
結果 |
使用する 2台の 合計容量 |
√3×45 ÷(2×45) |
約86.6% 利用率 |
同じもの 3台の Δ結線 |
√3×45 ÷(3×45) |
約57.7% Δ結線との 容量比 |
利用率は √3/2、3台のΔ結線との容量比は √3/3 です。どちらも効率ではありません。損失をゼロとしても、この2つの割合は残ります。また、負荷が平衡していることも条件です。単相負荷を加えて電流が偏る場合には、各巻線の電流を別々に確認します。
第5問|並行運転の条件
2台の変圧器を同じ周波数の電源につなぎ、二次側も接続して負荷を分担させる。この並行運転について、正しい記述はどれか。百分率インピーダンス(%インピーダンス)は、それぞれの変圧器自身の定格容量を基準とする。
- (1)定格容量に差があっても、電圧・極性などの条件をそろえ、%インピーダンスと抵抗/リアクタンスの比を合わせれば、容量に比例して分担させられる。
- (2)二次の無負荷電圧に差があっても、外部の負荷を外せば、変圧器どうしの循環電流は流れなくなる。
- (3)三相では、二次電圧の実効値が同じなら、位相のずれや相順の違いは考えなくてよい。
- (4)%インピーダンスの大きさが同じであれば、抵抗/リアクタンスの比が違っても、2台の分担力率は一致する。
- (5)%インピーダンスが少しでも違う2台は、各巻線の電流を制限しても並行運転できない。
正解:(1)条件がそろえば、異なる容量でも比例して分担できる
並行運転では、二次電圧の差によって変圧器間だけを流れる電流と、負荷へ送る電流の分け方を分けて考えます。前者が循環電流(横流)、後者が負荷分担です。
- (1)は正しい:定格容量を同じにすること自体は、必須ではありません。一次・二次の定格電圧をそろえ、接続端子の極性を合わせます。三相なら位相変位と相順も合わせます。そのうえで、自己容量基準の%インピーダンスと抵抗/リアクタンスの比が等しければ、大きな容量の変圧器が、その容量に応じた大きな電流を分担します。
- (2)は誤り:負荷がなくても、2台の二次電圧に差があれば、接続した巻線を通る閉回路に電流が流れます。原因は外部の負荷ではなく、変圧器間の電圧差です。負荷を外すだけでは、この電流の経路はなくなりません。
- (3)は誤り:交流電圧は大きさだけでは一致したことになりません。同じ実効値でも位相がずれていれば、瞬時の電圧には差があります。相順は3つの相が現れる順番で、これも接続先とそろえる必要があります。
- (4)は誤り:巻線側のインピーダンスは、抵抗 R とリアクタンス X の両方をもちます。比 R/X が違えばインピーダンスの角度が違うので、分担する電流の位相も違います。%インピーダンスの大きさだけでは、分担力率まで一致するとはいえません。
- (5)は誤り:%インピーダンスが異なっても、電圧・極性などの接続条件を満たし、各変圧器を過負荷にしない範囲なら運転できる場合があります。ただし、容量に比例した分担にはならず、片方が先に定格電流に達することがあります。合計容量だけを見て負荷を増やせません。
「容量が違ってもよい」と「何でも組み合わせてよい」は別です。また、%インピーダンスは各変圧器の定格を基準にした割合で、Ωで表したインピーダンスの値が等しいという意味でもありません。等しい二次定格電圧で自己容量基準の%インピーダンスが同じなら、Ω値は容量の大きい側ほど小さくなり、その側が多く電流を受け持ちます。
ここでは条件を見分けるところまでにします。実際に分担量や循環電流を計算する例は、変圧器の構造と原理の「並行運転」にあります。
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根拠にした資料
問題の設定・選択肢・数値計算・表は、このページ用に作成しました。解説の技術的な確認には、次の資料を使っています。
資料の確認日:2026年10月8日。第1問の倍率、第2問・第3問の電圧と電流、第4問の容量は、示した前提のもとで当サイトが計算した値です。資料の問題文や図を転載したものではありません。このミニテストは試験学習用で、設備の接続・切替手順を示すものではありません。
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