保護装置の問題でつまずくのは、リレーの名前ではなく「どの値を、どちら側で見ているか」です。この第1回で確かめるのは5つ。整定タップを一次側へ戻せるか、短絡と地絡で切る役が入れ替わることを説明できるか、ケーブルの長さから地絡保護の方式を決められるか、リレーと遮断器の時間を積み上げられるか、接地抵抗が保護の効きに響く理由を数字で言えるか、です。
5問はすべて、このサイトが学習用に書き下ろしたものです。1つ選んだら止まらずに、残り4つがどこで破綻しているかまで解答欄で追ってください。契約電力・静電容量・動作時間・耐電圧に置いた数値は計算をたどるための設定であり、特定の設備の仕様ではありません。
先に考え方を通しておきたい人は、変電所の保護装置|過電流リレーの整定・地絡電流・保護協調の計算から読み始めてください。5問を解き終えて手応えが足りなければ、変電所の保護装置 ミニテスト第2回と第3回で角度を変えた問題に進めます。
始める前に|一次と二次、電流と時間の単位をそろえる
この分野の怖いところは、桁や基準を取り違えたままでも、それらしい答えが出てしまう点にあります。解き始める前に、次の4つだけ頭に置いてください。
| 扱う量 | 直し方 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| CTの一次と二次 | 一次=二次×変流比 | タップの目盛りは二次側の値。倍率を語るときは必ず一次へ戻す |
| 整定の% | 基準は契約電力のときの負荷電流 | CTの一次定格や変圧器の定格電流を基準にすると、倍率が別物になる |
| サイクルと秒 | 1サイクル=1/f 秒 | 3サイクルは50 Hzで60 ms、60 Hzで50 ms。周波数は問題文の値を使う |
| mA と kA | 地絡はmA、短絡はkAの世界 | 桁が6つ違う。同じ「電流」でも、切る道具から違ってくる |
5問はいずれも、指定した以外の損失・電圧降下・過渡現象を無視した条件で考えます。計算は単位を付けたまま書き残しておいてください。外したときに、式のどこで向きを間違えたのかまで戻れます。点数そのものより、取り違えの正体を1つ見つけるほうが次につながります。
第1問|整定タップ3 Aは、一次側の何アンペアか
6.6 kVで受電しているキュービクルがある。受電用変流器(CT)の変流比は100/5 A、過電流継電器(OCR)の限時要素のタップは3 Aに整定されている。この限時要素が動作を始めるのは、一次側(6.6 kVの回路)におよそ何アンペアが流れたときか。
(1)3 A
(2)15 A
(3)60 A
(4)100 A
(5)300 A
第2問|PF・S形で短絡と地絡を切るのは何か
主遮断装置に高圧限流ヒューズ(PF)と高圧交流負荷開閉器(S)を組み合わせた、PF・S形の高圧受電設備がある。構内で①短絡事故、②地絡事故が起きたとき、事故電流を切る(回路を開く)のはそれぞれどれか。最も適切な組合せを選べ。
(1)①過電流継電器が遮断器を開く/②地絡継電器が遮断器を開く
(2)①限流ヒューズが溶断して切る/②地絡継電器または地絡方向継電器が開閉器をトリップさせる
(3)①限流ヒューズが溶断して切る/②限流ヒューズが溶断して切る
(4)①負荷開閉器が自動的に開く/②地絡継電器または地絡方向継電器が開閉器をトリップさせる
(5)①断路器が自動的に開く/②避雷器が事故電流を大地へ逃がす
第3問|ケーブルの長さから、GRのままでよいか決める
6.6 kVで受電する高圧受電設備がある。周波数は60 Hz。構内の高圧ケーブルは6 kV CVT 100 sqで、亘長は150 m、1心当たりの対地静電容量は0.45 μF/kmとする。地絡継電器(GR)は感度電流200 mAで整定されている。系統で地絡が起きたときに、この構内の対地静電容量を通って流れる充電電流の値と、選ぶべき方式の組合せとして最も適切なものはどれか。
(1)約97 mA、GR方式のままでよい
(2)約291 mA、GR方式のままでよい
(3)約291 mA、DGR方式を選ぶ
(4)約504 mA、DGR方式を選ぶ
(5)約1.94 A、DGR方式を選ぶ
第4問|協調が取れていない受電設備を、どう直すか
周波数50 HzのCB形高圧受電設備がある。受電用OCRには限時要素だけが整定されていて、構内短絡の電流領域では0.25 sで動作する。遮断器の遮断時間は3サイクルである。上位の配電用変電所のOCRは、短絡の領域を0.2 sで整定しているものとし、静止形OCRの慣性特性係数は0.9とする。この設備で構内短絡が起きたときに何が起こるか、また対策として最も適切なものはどれか。
(1)受電側が0.31 sで切り終えるので協調は取れている。上位には慣性特性があるため、0.2 sを過ぎても動作しない。
(2)上位が先に動作して他の需要家まで停電するおそれがある。受電用OCRに瞬時要素(動作時間0.05 s)を整定し、短絡の領域では合計0.11 sで切り終えるようにする。
(3)受電用OCRの限時要素のレバー整定を下げ、過負荷の領域も含めてすべて0.1 sで動作するようにする。
(4)受電用CTの変流比を大きくして、リレーが見る電流を小さくする。
(5)上位である配電用変電所のOCRを0.5 sへ変更してもらい、時間差を作る。
第5問|避雷器の接地抵抗が20 Ωのとき、機器は守れるか
高圧受電設備の引込口に避雷器が施設されている。守りたい機器の雷インパルス耐電圧を60 kV、避雷器の制限電圧を公称放電電流2.5 kAのとき30 kVとする。年次点検で避雷器の接地抵抗を測ったところ20 Ωだった。この状態で避雷器に2.5 kAの放電電流が流れたとき、機器の端子に現れる電圧のおおよその見積もりと、その判定として最も適切なものはどれか。接地抵抗による電位上昇だけを考え、接地線のインダクタンスや雷電流の波形は無視する。
(1)約30 kV。制限電圧そのものなので、耐電圧60 kVを下回り守れる。
(2)約50 kV。耐電圧60 kVを下回るので守れる。
(3)約80 kV。耐電圧60 kVを超えるので、このままでは守れない。
(4)約80 kV。ただし避雷器が動作している以上、耐電圧を超えても機器は守られる。
(5)約55 kV。接地抵抗はA種接地工事の上限である10 Ωで計算するので、耐電圧を下回り守れる。
5問の答え合わせと、戻って読み直す場所
答え合わせのあとが本番です。外した問題は、番号を覚えるのではなく、下の「見ていたこと」の欄に書いた考え方を確かめてから、解説記事の該当箇所へ戻ってください。
| 問 | 正解 | 見ていたことと、戻る場所 |
|---|---|---|
| 第1問 | (3)60 A | 二次の目盛りを変流比で一次へ戻せるか。解説記事の「計器用変成器」と計算例1 |
| 第2問 | (2) | 短絡と地絡で切る道具が入れ替わること。解説記事の「切る役は受電設備の方式で変わる」 |
| 第3問 | (3)約291 mA | Ic=3ωCE と、感度電流の1/2という目安。解説記事の計算例2 |
| 第4問 | (2) | リレーと遮断器の時間を足し、上位の整定×慣性特性係数と比べる。解説記事の計算例3 |
| 第5問 | (3)約80 kV | 制限電圧に接地の電位上昇が上乗せされること。解説記事の「避雷器」 |
整定と判断に使う数字の物差し
この分野で覚えておく価値があるのは、暗記した用語ではなく、判断の分かれ目になる数字です。いずれも規格や設備の条件で動くので、試験では問題文に与えられた値が優先します。
| 決めること | 目安 | 意味 |
|---|---|---|
| 限時要素 | 負荷電流の120〜150 % | 通常の負荷変動では動かず、過負荷は捕まえる高さに置く |
| 瞬時要素 | 負荷電流の1,000〜1,500 % | 励磁突入電流や始動電流では動かない高さに置く |
| GRの感度電流 | 200 mAが一般的 | 高感度にしすぎると誤動作や不必要動作を招く |
| DGRへ替える | 充電電流が感度電流の1/2以上 | 構外の事故によるもらい動作を確実に防ぐため |
| 慣性特性係数 | 静止形OCRで0.9 | 整定時間×0.9を超えると、上位はもう止まりきれない |
| A種接地工事 | 原則10 Ω以下 | 避雷器では、この抵抗値がそのまま保護の効きに響く |
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- 受験の全体像をつかむ:電験三種とは?日程・科目合格・合格率
- どの資格から手を付けるか:ビルメン資格の学習ロードマップ
出典・公式資料の確認先
整定の目安・感度電流・慣性特性係数・受電設備の方式については、次の資料で内容を確認しています。設問と選択肢、置いた数値、表の中身は、すべてこのページのために書き起こしたものです。掲載元の問題や図表を写したものではありません。
- 日本電気技術者協会「高圧自家用受電設備の保護について」:CB形とPF・S形の受け持ちの違い、JISキュービクルの容量の上限、短絡電流が数千A〜1万数千Aの大きさになること、GRの感度電流200 mA、充電電流が感度電流の1/2以上ならDGR方式、限時要素120〜150 %・瞬時要素1,000〜1,500 %、JEC 2510の慣性特性係数0.9、ヒューズの3つの特性を確認できます。第1問から第4問までの根拠です。
- 同「高圧地絡継電装置の動作について(2)不必要動作防止対策」:ZCTを貫通するケーブル遮へい層の接地方法、リード線への電波ノイズ、雷サージ、慣性特性の経年劣化という、もらい動作以外の不必要動作の要因がまとめられています。第3問の後半で使いました。
- e-Gov法令検索「電気設備に関する技術基準を定める省令」:第15条が地絡遮断器などの施設を、第49条が避雷器を施設する箇所を定めています。第2問と第5問の背景です。
- 電気技術者試験センター「試験の問題と解答」:実施機関そのものが、過去の出題と解答を公開しています。保護装置が本番でどんな設定・どんな聞き方で出ているかは、この一次資料で見るのが一番早い方法です。
資料を確認した日:2026年9月9日。ここで使った目安の値——整定の帯、感度電流、慣性特性係数、遮断時間のサイクル数、ケーブル1 km当たりの静電容量——は、機器の形式や規格の版、配電系統の条件で動きます。第5問の耐電圧・制限電圧・放電電流も、計算をたどるために置いた設定値です。実際の設備で整定や機器の選定にあたるときは、電力会社から示された動作特性、機器メーカーの仕様書、そのとき有効な法令と解釈を必ず参照してください。演習で迷ったら、問題文に書かれた条件が答えの根拠になります。
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
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