保護装置を「事故を検出して遮断するもの」と覚えただけでは、試験でも現場でも足りません。実際に問われるのは、どこまでの電流で動かすか、どのくらいの時間で動かすか、という数字の決め方です。この決め方を整定(せいてい)と呼びます。
この記事で数字にするのは3つです。過電流リレーの整定タップをどう選ぶか、対地静電容量から地絡の充電電流をどう出すか、遮断が終わるまでの時間をどう積み上げれば保護協調が成り立つか。式は途中を省かず、単位を付けたまま進めます。出てくる値はすべて、条件を書き出した学習用の想定です。
保護装置の仕事は「測る・決める・切る」の3つに分かれる
変電所や高圧受電設備で短絡や地絡が起きたとき、事故の箇所をできるだけ早く、できるだけ狭い範囲で切り離す必要があります。この流れを担当ごとに分けると、次の3段になります。
| 段 | 担当する機器 | やっていること |
|---|---|---|
| 測る | 変流器(CT)、計器用変圧器(VT)、零相変流器(ZCT)、零相電圧検出装置(ZPD)、接地形計器用変圧器(EVT) | 高圧の電流・電圧を、リレーが扱える大きさまで縮める |
| 決める | 保護リレー(保護継電器) | 縮められた値が整定値を超えたか、位相はどちら向きかを判定する |
| 切る | 遮断器(CB)、高圧限流ヒューズ(PF) | 判定を受けて電流の通り道を切る |
この3段のどこかが欠けると保護は成立しません。リレーがどれだけ高性能でも、CTの比を間違えれば見ている電流が違いますし、遮断器の遮断容量が足りなければ切れずに焼損します。試験では「リレーの名前と役割」だけが問われがちですが、実際は測る側と切る側とセットで考える分野です。
法令の側は、この3段を細かく指定するのではなく「保護できるようにしなさい」という書き方をしています。e-Gov法令検索「電気設備に関する技術基準を定める省令」で条文を読むと、第14条が過電流について「電路の必要な箇所には、過電流による過熱焼損から電線及び電気機械器具を保護し、かつ、火災の発生を防止できるよう、過電流遮断器を施設しなければならない」、第15条が地絡について「電路には、地絡が生じた場合に、電線若しくは電気機械器具の損傷、感電又は火災のおそれがないよう、地絡遮断器の施設その他の適切な措置を講じなければならない」と定めています。具体的な整定値は法令の条文ではなく、電力会社との協調と規格・指針で決まるという関係を先に押さえておくと、あとの計算がどこから来た数字なのか迷わなくなります。
「切る役」は受電設備の方式で変わる
高圧受電設備は、主遮断装置の形式で2種類に分かれます。日本電気技術者協会「高圧自家用受電設備の保護について」の解説では、次のように整理されています。
| 方式 | 主遮断装置 | 事故を切る受け持ち |
|---|---|---|
| CB形 | 遮断器(真空遮断器など) | 短絡…過電流リレー(OCR)が検出して遮断器を開く 地絡…地絡リレー(GR)または地絡方向リレー(DGR)が検出して遮断器を開く |
| PF・S形 | 高圧限流ヒューズと開閉器の組合せ | 短絡…ヒューズ自身が溶断して切る(リレーは介さない) 地絡…GRまたはDGRが検出して開閉器をトリップさせる |
PF・S形で短絡をヒューズに任せるのは、短絡電流が数千アンペアから1万数千アンペアという大電流になり、限流ヒューズなら電流の山が立つ前に切れるからです。ただしヒューズは小さい電流をうまく切れない領域を持っています。そのため同じ解説では、変圧器の二次側直下で短絡したときに一次電流が小さいと遮断に時間がかかり、変圧器を焼損するおそれがあるので、容量の小さい変圧器には個別にもヒューズを設ける必要があると注意しています。方式の違いは「どちらが上等か」ではなく、守備範囲の違いだと考えてください。
保護リレーは「何を測るか」で分かれる
種類が多く見えますが、測っている量で並べ替えると6つの系統に収まります。
| リレー | 測る量 | 守るものと、押さえる条件 |
|---|---|---|
| 過電流リレー(OCR) | 電流の大きさ | 受電設備、配電線、変圧器の過負荷を守る。負荷電流では動かず、短絡電流では確実に動く帯に整定する |
| 地絡リレー(GR、地絡過電流リレー) | 零相電流だけ | 構内の地絡を守る。方向が分からないので、構外の事故で誤って動くことがある |
| 地絡方向リレー(DGR) | 零相電流と零相電圧の位相差 | 構内の地絡を守る。零相電圧を取り出す機器(ZPD、EVT)が別に要る |
| 比率電流差動リレー | 入る電流と出る電流の差 | 変圧器や発電機の内部事故を守る。結線による位相差とCT比のずれを補正しておかないと誤動作する |
| 距離リレー | 電圧と電流の比(インピーダンス) | 送電線を守る。インピーダンスは距離にほぼ比例するという前提に立っている |
| 不足電圧リレー(UVR)・過電圧リレー(OVR) | 電圧の低下・上昇 | 非常用発電機の始動指令や、系統からの切り離しに使う。電圧の変化は事故以外でも起きるので、時間を持たせて誤検出を避ける |
電流の差を見る比率電流差動リレーだけは、少し考え方が違います。日本電気技術者協会「変圧器保護(電流差動リレー方式)について」によれば、変圧器は正常なら一次と二次のアンペアターンが釣り合うので差電流はほぼ零になり、巻線間で短絡すると見かけの巻数が変わってこの釣り合いが崩れます。差電流は内部の事故のときにだけ現れ、外部で事故が起きて大電流が通り抜けるだけでは現れない――これが、変圧器の内部事故を高感度に見つけられる理由です。
ただし現実にはCTの特性差やタップ切換による変圧比の変化で、事故でなくても小さな差電流が出ます。そこで通過電流の大きさに応じて動作しにくくする抑制のしくみを加えたものが比率電流差動リレーです。同じ解説では、Y−Δ結線の変圧器では二次側の電流が一次側に対して30度ずれるため、CTの結線で位相をそろえ、大きさは補償変流器(CCT)やリレー側の補正機能で合わせると説明されています。「差を取るだけ」では済まないところが、この方式の要点です。
主保護と後備保護は、動作時間の差で役割を分ける
ひとつの区間には、ふつう2重の保護がかかっています。
| 区分 | ねらい | 動作の速さ |
|---|---|---|
| 主保護 | その区間の事故を、いちばん狭い範囲で切る | 速い。区間内なら即座に動く |
| 後備保護(バックアップ) | 主保護やその遮断器が動かなかったときに代わりに切る | 遅い。主保護が終わるまで待つ時間差を持たせる |
後備保護がわざと遅いのは、性能が低いからではありません。先に主保護が仕事を終える猶予を作るために、あえて遅らせています。この時間差の作り方は「計算例3」で数字にします。
限時特性は4つの型がある
| 型 | 電流と動作時間の関係 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 瞬時 | 整定値を超えたら、時間をおかず動く | 短絡のように大きな電流の領域 |
| 定限時 | 電流の大きさによらず、決めた時間で動く | 上位と下位で時間差だけを作りたいとき |
| 反限時 | 電流が大きいほど動作時間が短くなる | 過負荷から短絡まで、1つの特性で幅広く見たいとき |
| 反限時 定限時 |
ある電流までは反限時、それを超えると一定時間 | 大電流側で時間が短くなりすぎるのを止めたいとき |
実務で使われるOCRは、多くの場合この特性を1台の中で組み合わせています。過負荷の領域は限時要素でゆっくり、短絡の領域は瞬時要素で一気にという分担です。整定はこの2つを別々に決めます。
計器用変成器|リレーが見ているのは縮められた値
高圧の電流や電圧を、リレーがそのまま受け取ることはできません。あいだに入って値を縮めるのが計器用変成器です。整定の話をするときは、一次側(実際の高圧回路)の値と二次側(リレーが見る値)を必ず区別してください。この混同が、整定の計算でいちばん多いつまずきです。
| 機器 | 縮めるもの | 二次側の代表値と、一次に戻す計算 |
|---|---|---|
| 変流器(CT) | 電流 | 二次は5 A(配線が長い設備では1 Aも使われる)。一次電流=二次電流×変流比 |
| 計器用変圧器(VT) | 線間電圧 | 二次は110 V。一次電圧=二次電圧×変圧比 |
| 零相変流器(ZCT) | 3相をまとめた電流の残り分 | 健全なら零。地絡すると零でなくなり、その差だけが出力される |
| 零相電圧検出装置(ZPD)・接地形計器用変圧器(EVT) | 中性点の電位のずれ | ブロークンデルタ結線などから取り出し、DGRの位相判定の基準に使う |
たとえば変流比50/5のCTなら、一次と二次の比は10です。一次に80 Aが流れていれば、リレーが見ているのは8 Aということになります。リレーの整定タップは二次側の値で目盛られているので、一次で何アンペアに相当するのかを掛け算で戻す作業が必ず要ります。
取り扱いの禁止事項も、この「縮める」構造から出てきます。CTは通電中に二次側を開いてはいけません。VTは二次側を短絡してはいけません。理由まで含めた説明は変電所の設備の記事に置いてあるので、そちらで確認してください。ここでは電流を主役にしている機器は道を切ってはいけない、電圧を主役にしている機器は道をつないではいけない、という向きの違いとして覚えておけば十分です。
零相の量は、3相をまとめて初めて見える
3相の電流は、正常なら足し合わせると零になります。地絡すると、大地へ抜けた分だけ零にならなくなります。ZCTは3相の電線をまとめて1つの窓に通し、この「零にならない分」だけを取り出す変流器です。1相ずつ測っていては見つけられない小さな漏れを検出できるのは、この構造のおかげです。
日本電気技術者協会「地絡方向継電器(DGR)の方向判別機能と入力極性」では、地絡すると健全相の対地電位が上がり、中性点の電位(零相電圧)が現れることが図解されています。そしてDGRは、この零相電圧を基準にして零相電流の位相がどちら側に来るかを見ます。構内の事故なら電流はある向き、構外の事故なら逆向き――向きが逆になるという性質が、方向判別の土台です。位相を見るためには零相電圧が要るので、DGRにはZCTだけでなくZPDやEVTが組み合わせて使われます。中性点の接地方式ごとの違いは電力系統の保護と安定で扱います。
計算例1|過電流リレーの整定タップを決める
条件:公称電圧6.6 kVで受電する高圧受電設備。契約電力300 kW、負荷力率0.85(遅れ)、受電用CTの変流比は50/5 Aとします。限時要素は負荷電流の120〜150 %、瞬時要素は負荷電流の1,000〜1,500 %の帯に置くものとして、それぞれのタップを選んでください。
手順1:一次の負荷電流を求める。三相の電力の式 P=√3 VI cosθ を電流について解きます。
I=P/(√3 V cosθ)=300×103/(√3×6,600×0.85)=300×103/9,717=約30.9 A
手順2:CT比で二次側に換算する。変流比50/5は10倍なので、リレーが見る電流は 30.9/10=約3.09 A です。
手順3:帯の上と下を計算する。限時要素は120〜150 %なので、二次側では 3.09×1.2=3.70 A から 3.09×1.5=4.63 A の帯になります。瞬時要素は1,000〜1,500 %なので、3.09×10=30.9 A から 3.09×15=46.3 A です。
手順4:帯に入るタップを選ぶ。タップは飛び飛びの値しか選べません。ここが計算どおりにいかないところです。
| 要素 | 計算した帯(二次側) | 選ぶタップと、一次に戻した値 |
|---|---|---|
| 限時要素 | 3.70〜4.63 A | 4 A → 一次40 A(負荷電流の約130 %。帯の中) |
| 限時要素を1段上げる場合 | 同上 | 5 A → 一次50 A(約162 %。帯を少し超える) |
| 瞬時要素 | 30.9〜46.3 A | 40 A → 一次400 A(約1,300 %。帯の中) |
限時要素は4 Aが素直な選び方です。5 Aにすると一次換算50 Aとなり、負荷電流の162 %まで見逃すことになります。ただし現場では、季節による負荷変動や増設の予定を見て1段上げることもあります。上げれば誤って動く心配は減りますが、そのぶん過負荷の検出は鈍くなります。この2つは必ず引き換えになると覚えておいてください。
瞬時要素を1,000 %以上という大きな倍率に置くのは、変圧器を投入した瞬間に流れる励磁突入電流や、電動機の始動電流で動いてしまわないためです。前掲の日本電気技術者協会の解説でも、瞬時要素は契約電力における負荷電流の1,000〜1,500 %を目安に、突入電流で動作しない値を選ぶと説明されています。整定値は「事故で確実に動く」だけでなく「事故でないときに動かない」という条件も同時に満たす必要があるわけです。
計算例2|地絡の充電電流からGRとDGRを選ぶ
条件:公称電圧6.6 kV、周波数60 Hzの高圧受電設備。構内の高圧ケーブルによる1線当たりの対地静電容量の合計が0.15 μFだとします。地絡リレー(GR)の感度電流は200 mAに整定されています。GR方式のままでよいか、DGR方式にすべきかを判断してください。
手順1:対地電圧を求める。各相と大地のあいだにかかるのは線間電圧ではなく相電圧です。
E=6,600/√3=約3,810 V
手順2:3相ぶんの充電電流を求める。コンデンサに流れる電流は I=ωCE です。3相そろって流れる分を見るので3倍します。
ω=2πf=2π×60=377 rad/s
Ic=3ωCE=3×377×0.15×10−6×3,810=約0.65 A(650 mA)
手順3:GRのままでよいか判断する。この650 mAは、系統のどこかで地絡が起きたときに、この静電容量を通って流れる分です。平常時にも各相に充電電流はありますが、三相で打ち消し合うためZCTは検出しません。ここが判断の分かれ目になります。構外(電源側)で地絡が起きると、この静電容量に向かって電流が流れ込み、構内のZCTを通り抜けて外へ出ていきます。ZCTから見れば、自分の構内で地絡したときと区別がつきません。これがGR方式の「もらい動作」(不必要動作)です。
前掲の日本電気技術者協会の解説では、GRの感度電流は誤動作とのかね合いから一般に200 mAで整定され、充電電流が感度電流の1/2以上になるならDGR方式を採るのがよいとされています。今回は200 mAの1/2である100 mAを大きく超えているので、DGR方式を選ぶ場面です。
| 比べる点 | GR方式 | DGR方式 |
|---|---|---|
| 入力する量 | 零相電流だけ(ZCT) | 零相電流と零相電圧(ZCT+ZPDまたはEVT) |
| 判定のしかた | 大きさが整定値を超えたか | 大きさに加えて、零相電圧を基準にした位相が構内向きか |
| 構外の事故に対して | 充電電流が大きいともらい動作しうる | 向きが逆になるので区別できる |
| 選ぶ目安 | 構内のケーブルが短く、充電電流が小さいとき | 充電電流がGR感度電流の1/2以上になるとき |
目安の小ささに注意してください。同じ式を逆に使って、充電電流がちょうど100 mAになる静電容量を求めると、0.1/(3×377×3,810)=約0.023 μF です。高圧ケーブルの対地静電容量は1 km当たり0.4 μF前後になることもあるので、構内のケーブルがわずか数十メートル伸びただけで、この目安を超えてしまうことになります。地絡保護は感度を上げれば良くなるという単純な話ではなく、感度と誤動作のあいだで釣り合いを取る設計だと分かります。
計算例3|保護協調は「時間の差」で作る
保護協調は、事故点にいちばん近い遮断器だけを動かして、上位(電源側)は動かさないという考え方です。家のブレーカーで例えるなら、リビングでショートしたときにリビングの分岐ブレーカーだけが落ち、玄関の主幹ブレーカーは落ちない状態です。これを実現する道具は、電流の大きさではなく時間です。負荷側から電源側へ向かって、動作時間をだんだん長く整定しておきます。これを段階時限による選択遮断方式と呼びます。
条件:周波数60 Hz。受電設備のOCRの瞬時要素が動作するまでの時間を40 ms、遮断器が指令を受けてから電流を切り終えるまでの時間を3サイクルとします。上位である配電用変電所のOCRは、短絡の領域で0.2 sに整定されており、静止形OCRの慣性特性係数は0.9です。協調は取れているでしょうか。
手順1:受電側が切り終わるまでの時間を足す。サイクルは周波数で秒に直します。60 Hzなら1サイクルは 1/60=16.7 ms です。
遮断器の遮断時間=3×(1/60)=0.050 s(50 ms)
受電側の合計=40 ms+50 ms=90 ms(0.09 s)
手順2:上位が動き出す限界を求める。ここで慣性特性係数が効いてきます。リレーは、整定した時間より短いところで電流が消えても、動きかけた接点がすぐには止まりません。この「止まりきれる限界」を整定時間に対する割合で表したものが慣性特性係数で、前掲の日本電気技術者協会の解説では、静止形OCRについてJEC 2510で0.9と規定されていると説明されています。
上位が止まりきれる限界=0.2×0.9=0.18 s(180 ms)
手順3:差を見る。0.18 s−0.09 s=0.09 s の余裕があります。受電側が切り終わったあとも、上位が動き出すまでに0.09 sの猶予が残っているので、協調は取れていると判断できます。
| 時刻 | 起きること | 経過 |
|---|---|---|
| 0 ms | 構内で短絡が起きる | — |
| 40 ms | 受電OCRの瞬時要素が遮断器に指令を出す | 40 ms |
| 90 ms | 遮断器が電流を切り終える(3サイクル) | +50 ms |
| 180 ms | ここを過ぎると上位のOCRが止まりきれなくなる | 余裕90 ms |
この余裕が足りないと、上位まで一緒に落ちて停電の範囲が広がります。逆に余裕を取りすぎると、事故電流が長く流れ続けて機器の傷みが大きくなります。整定は、この2つのあいだで決める作業です。なお上位である配電用変電所の整定は電力会社が決めるものなので、実際の設計では自分で仮定せず、電力会社から提示された条件を使います。試験問題でも、上位の動作時間は必ず問題文に与えられます。
避雷器|どこに置くかと、接地の効き方
避雷器は、雷や開閉によって現れる異常電圧から機器の絶縁を守ります。ふだんは電流をほとんど流さず、電圧が一定の高さを超えたときだけ導通して大地へ逃がし、電圧が下がればまた流さなくなる、という切り替えを自分で行う素子です。現在の主流は酸化亜鉛(ZnO)素子を使ったギャップレス形です。
置く場所は法令に書かれています。前掲の省令の第49条は、雷電圧による損壊を防げるよう、次の箇所またはこれに近接する箇所に避雷器の施設その他の適切な措置を講じなければならないと定めています。
| 号 | 施設する箇所 |
|---|---|
| 第1号 | 発電所、蓄電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所の架空電線引込口及び引出口 |
| 第2号 | 架空電線路に接続する配電用変圧器であって、過電流遮断器の設置等の保安上の保護対策が施されているものの高圧側及び特別高圧側 |
| 第3号 | 高圧又は特別高圧の架空電線路から供給を受ける需要場所の引込口 |
ビルの高圧受電設備に避雷器があるのは、第3号にあたるからです。ただし条文には「雷電圧による当該電気設備の損壊のおそれがない場合は、この限りでない」というただし書きが付いています。地中引込みだけで架空電線に接していない場合など、免除される条件があるということです。条文は改正されるので、実際の判断では最新の条文と、経済産業省が示す電気設備の技術基準の解釈を確認してください。
制限電圧と、機器の耐えられる電圧の関係
避雷器が動作しているあいだ、その端子には電圧が残ります。これを制限電圧と呼びます。守るための条件はひとつで、制限電圧が、守りたい機器の耐えられる電圧より十分に低いことです。この関係を組み立てる設計を絶縁協調といいます。避雷器を付けたから安全、ではなく、数字の大小関係が成り立って初めて意味を持ちます。
だから、置く位置も効いてきます。避雷器と機器が離れていると、進行してきた電圧の波が機器の端で反射するあいだに機器側の電圧が制限電圧より高くなってしまいます。避雷器はできるだけ守りたい機器の近くに置くのが原則なのは、このためです。
接地抵抗が高いと、保護の効きが落ちる
避雷器には接地が要ります。電気設備の技術基準の解釈では、高圧・特別高圧の電路に施設する避雷器にA種接地工事(接地抵抗値は原則10 Ω以下)を求めています。この接地抵抗が高いと何が起きるかを、単純化して見積もってみます。
避雷器が動作して2.5 kAの放電電流が接地線を通って大地へ流れたとします。接地抵抗だけに注目すると、接地極の電位は次のように持ち上がります。
接地抵抗10 Ωのとき:2,500 A×10 Ω=25 kV
接地抵抗が30 Ωまで悪化したとき:2,500 A×30 Ω=75 kV
機器から見た電圧は、避雷器の制限電圧に、この電位上昇が上乗せされた形になります。接地抵抗が3倍になると、上乗せ分も3倍になるという関係です。避雷器そのものを良いものに替えても、接地が悪ければ守れる電圧の水準は下がってしまいます。点検で接地抵抗を測る理由は、法令に書いてあるからというだけではありません。接地工事の種別と抵抗値の考え方は電気設備技術基準・接地工事で扱います。
※上の見積もりは接地抵抗による電位上昇だけを取り出した簡略計算です。実際には接地線のインダクタンスや雷電流の波形(立ち上がりの急峻さ)も効くため、数値はもっと複雑になります。ここでは「接地抵抗に比例して上乗せ分が増える」という向きだけをつかんでください。
理解度チェック
整定にかかわる3問です。電卓を出す前に、まず一次側と二次側のどちらの値を聞かれているかを確かめてから解いてみてください。
確認1|過電流リレーの限時要素のタップ
公称電圧6.6 kVで受電する高圧受電設備があります。契約電力450 kW、負荷力率0.90(遅れ)、受電用CTの変流比は75/5 Aです。限時要素を負荷電流の120〜150 %の帯に整定するとき、選ぶタップとして最も適切なのはどれですか。タップは1 A刻みで選べるものとします。
(1)3 A
(2)4 A
(3)5 A
(4)6 A
(5)8 A
確認2|地絡の充電電流とリレー方式の選択
公称電圧6.6 kV、周波数50 Hzの高圧受電設備で、構内の高圧ケーブルによる1線当たりの対地静電容量の合計が0.05 μFでした。GRの感度電流を200 mAとするとき、地絡時にこの静電容量を通って流れる充電電流の値と、選ぶべきリレー方式の組合せとして最も適切なのはどれですか。
(1)約60 mA、GR方式でよい
(2)約180 mA、GR方式でよい
(3)約180 mA、DGR方式を検討する
(4)約540 mA、DGR方式を検討する
(5)約1,080 mA、DGR方式を検討する
確認3|保護協調の時間の余裕
周波数60 Hzの高圧受電設備で、OCRの瞬時要素が動作するまでの時間が30 ms、遮断器の遮断時間が5サイクルです。上位である配電用変電所のOCRは短絡の領域で0.2 sに整定され、慣性特性係数は0.9とします。受電側が切り終わってから、上位が止まりきれなくなるまでの余裕に最も近いのはどれですか。
(1)約0.05 s
(2)約0.07 s
(3)約0.09 s
(4)約0.11 s
(5)約0.15 s
まとめと次の学習先
- 保護は「測る(計器用変成器)・決める(リレー)・切る(遮断器やヒューズ)」の3段。どれが欠けても成立しない。
- 法令は保護できるようにせよと定めるだけで、整定値は電力会社との協調と規格で決まる。
- リレーは測る量で分かれる。差動は内部事故でだけ差電流が出ることを使い、DGRは零相電圧を基準に零相電流の向きを見る。
- 整定タップは二次側の目盛り。変流比を掛けて一次に戻さないと、負荷電流の何倍かを判断できない。
- 限時要素は負荷電流の120〜150 %、瞬時要素は1,000〜1,500 %が目安。突入電流で動かないことも同時に満たす。
- 地絡の充電電流は Ic=3ωCE。感度電流の1/2以上になったらDGRを検討する。
- 保護協調は時間差で作る。リレーの動作時間と遮断器の遮断時間を足し、上位の整定時間×慣性特性係数と比べる。
- 避雷器は省令第49条が定める箇所へ。制限電圧が機器の耐電圧より十分低いこと、近くに置くこと、接地抵抗を低く保つことがそろって初めて効く。
このあと手を動かす
- 変電所の保護装置 ミニテスト第1回:ここで整理した内容を、5問の演習で通してみる。
- 同 第2回と同 第3回:角度を変えて聞き直す追加の演習。
- 変電所の設備:ひとつ前のテーマ。変圧器の効率、短絡電流、力率改善の計算を復習する。
- 変電所の設備 ミニテスト第1回:停電作業の操作順序や並行運転を、演習で確かめる。
- 架空送電線路:次のテーマ。電線のたるみ、がいし、架空地線へ進む。
- 電力系統の保護と安定:中性点接地方式の違いと、地絡電流の大きさの関係をつかむ。
- 送電の電気的計算:事故ではない平常時の損失と電圧の落ち方を計算する。
- 電気設備技術基準・接地工事:A種からD種までの接地工事と抵抗値の考え方。
- 電験三種とは?日程・科目合格・合格率:受験の全体像と、科目合格を使った計画の立て方。
- 電気技術者試験センターが公開している第三種の問題と解答:保護装置が実際にどう出題されたかを、本物の設問で確かめる。
- ビルメン資格の学習ロードマップ:受変電を扱う仕事と、そこへ向かう資格の並び。
リンク先と条文を確かめたのは2026年9月9日です。本文と理解度チェックに出てくる契約電力・静電容量・動作時間は、どれも計算の流れを追うために置いた仮の値で、特定の設備から取った数字ではありません。整定の目安、GRの感度電流、慣性特性係数、遮断器の遮断時間は、機器の形式や規格、電力会社が示す協調の条件によって変わります。現場で整定を決めるときは、電力会社から提示された条件と機器の仕様書、そのときに有効な法令・解釈の条文にあたってください。試験では問題文に与えられた条件がすべてです。
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