ミニテスト 電力

架空送電線路ミニテスト第1回|必要張力・対地高さ・実長・コロナ・塔脚接地の5問

架空送電線路で点を落とすのは、公式を忘れたときではなく、式に入れる値を取り違えたときです。この第1回で確かめるのは5つ。荷重の向きをそろえて必要な張力を出せるか、弛度から電線の地上高へ話をつなげられるか、温度で伸びた実長がたるみをどれだけ動かすかを言えるか、雨の日にコロナが出る理由を数値で示せるか、雷電流と接地抵抗から絶縁が持つかどうかを判断できるか、です。

5問はすべてこのページのために書き下ろしました。ひとつ選んで終わりにせず、残り4つがどこで崩れているかまで解答欄で追ってください。径間・荷重・張力・線膨張係数・雷電流・電位傾度に置いた数値は、計算の道すじをたどるための設定であり、実在の線路の値ではありません。

考え方から確かめたい人は、架空送電線路|たるみの合成荷重・実長・逆フラッシオーバの計算を先に読んでください。この5問を終えて手応えが足りなければ、架空送電線路 ミニテスト第2回第3回で、多導体・ねん架・塩害など別の角度の問題に進めます。

解き始める前に|荷重の向きと、式に入れる単位

このテーマの答え合わせでいちばん多いずれは、計算そのものではなく「どの荷重を、どの向きのものとして扱ったか」で生まれます。まず次の対応だけ頭に置いてください。

荷重 働く向き 合成のしかた
電線の自重 鉛直下向き 着氷雪と足し算する
着氷雪荷重 鉛直下向き 自重と足し算する
風圧荷重 水平(電線に直角) 鉛直の合計と三平方の定理で合成する

向きが同じものは足し、向きが直角なものは二乗して足してから平方根を取る。この使い分けを外すと、あとの計算がいくら正しくても答えは合いません。式のほうも、求めたいものによって形が変わります。

求めるもの 単位で外しやすい点
弛度 D DWS2/(8T) W は N/m、SD は m、T は N
水平張力 T TWS2/(8D) 弛度を小さくするほど張力は大きくなる(反比例)
実長 L LS+8D2/(3S) LS は m の小数。逆に解くと D=√{3S(LS)/8}
鉄塔の電位上昇 V VIR 雷電流はkAの桁。Aに直さないと1,000倍ずれる

5問はいずれも、支持点が左右同じ高さで、弛度が径間に比べて十分小さい放物線近似が成り立つ条件で考えます。指定した以外の伸び・たわみ・風向の変化は無視してください。計算は単位を付けたまま書き残しておくと、外したときに式のどこで向きを取り違えたのかまで戻れます。

第1問|弛度を6.0 m以下に収めるには、張力をいくら以上にするか

径間180 mの架空送電線がある。電線の自重は18 N/m、着氷雪による荷重は10 N/m、電線に直角に働く風圧荷重は21 N/mである。この条件で弛度を6.0 m以下に収めたい。水平張力を最低いくらにすればよいか、最も近い値を選べ。

(1)約12,200 N
(2)約18,900 N
(3)約19,900 N
(4)約23,600 N
(5)約33,100 N

第2問|風が吹いているとき、径間中央の電線は地上何メートルか

径間220 mの架空送電線がある。支持点の高さは左右とも地上22 mである。電線の鉛直方向の荷重(自重と着氷雪の合計)は24 N/m、電線に直角に働く風圧荷重は18 N/m、水平張力は16,500 Nである。風が吹いているとき、径間中央にある電線の地上高に最も近いのはどれか。

(1)約6.6 m
(2)約11.0 m
(3)約13.2 m
(4)約15.4 m
(5)22.0 m

第3問|気温が45 ℃上がると、弛度はどこまで増えるか

径間300 mの架空送電線を、気温-10 ℃のときに弛度6.0 mで架線した。その後、気温が35 ℃まで上がった。電線の線膨張係数を23×10-6/℃、実長は LS+8D2/(3S) で表されるものとする。このときの弛度に最も近いのはどれか。風はないものとする。

(1)約5.9 m
(2)6.0 m
(3)約6.3 m
(4)約8.4 m
(5)約22.5 m

第4問|雨の日にだけコロナが出るのはなぜか、数値で示す

標準状態(気温20 ℃、気圧1,013.25 hPa)における空気のコロナ臨界電位傾度は、実効値で約21.1 kV/cm(波高値でいえば約30 kV/cm)とされる。天候係数は晴天のとき1.0、雨・雪・霧のとき0.8とし、電線表面の状態に関する係数と相対空気密度はいずれも1.0とする。ある送電線の電線表面の電位傾度は実効値で18 kV/cmである。雨天時のコロナ臨界電位傾度(実効値)に、この線路で雨天にコロナが発生するかどうかを組み合わせたものとして、正しいのはどれか。

(1)約16.9 kV/cm、コロナは発生しない
(2)約16.9 kV/cm、コロナが発生する
(3)約21.1 kV/cm、コロナは発生しない
(4)約24.0 kV/cm、コロナは発生しない
(5)約26.4 kV/cm、コロナは発生しない

第5問|逆フラッシオーバを起こさない塔脚接地抵抗はいくらまでか

送電線の鉄塔に25 kAの雷電流が流れた。このうち80 %が塔脚の接地抵抗を通って大地へ流れ、残りは架空地線を通って隣の鉄塔へ分かれるものとする。がいし連の50 %フラッシオーバ電圧は750 kVである。接地抵抗による鉄塔の電位上昇だけを考えるとき、逆フラッシオーバを起こさないためには塔脚接地抵抗をいくら以下にする必要があるか。

(1)約0.04 Ω以下
(2)24 Ω以下
(3)30 Ω以下
(4)37.5 Ω以下
(5)37,500 Ω以下

5問を通して残ること

  • 荷重は向きで扱いが変わる。鉛直どうし(自重+着氷雪)は足し算、風圧は直角なので三平方の定理。ここを外すと以降が全部ずれる。
  • 合成荷重で出した弛度は斜めに測った長さ。地上高に効くのはその鉛直成分で、それは鉛直荷重だけで計算した弛度と一致する。合成荷重が要るのは張力と、風で振れた位置を見るとき。
  • 弛度と張力は反比例。たるみを半分にすれば張力は倍。上げられる張力には、電線の強さと支持物の強さという上限がある。
  • 実長のわずかな伸びが弛度では拡大して現れる。低温=張力が最大、高温=弛度が最大の両端を確認する。
  • コロナの判定は実効値どうしで比べる。雨天は臨界値が0.8倍に下がる側で、上げる側ではない。
  • 逆フラッシオーバは鉄塔の電位上昇が原因。VIR のうち、こちらが下げられるのは R だけ。

次に読むところ

出典・公式資料の確認先

臨界電位傾度、天候係数、雷対策の寸法、法令が求めている値は、下の資料で内容を確かめました。一方で、設問の設定・5つの選択肢・計算に置いた数値・2つの表は、このページのために新しく組み立てたものです。引用元にある問題や図表を写し取ったものではありません。

上記の資料にあたったのは2026年9月9日です。5問に置いた径間・荷重・張力・線膨張係数・塔脚を通る電流の割合・フラッシオーバ電圧・電線表面の電位傾度は、計算の道すじをたどるために設定した値であり、特定の線路の仕様ではありません。線膨張係数は電線の種類によって変わり、塔脚を通る電流の割合も架空地線の条数・径間・隣接する鉄塔の接地抵抗で変わります。がいしの連結個数や離隔距離、接地抵抗の要求値は、電圧階級・地形・気象条件と、そのとき有効な法令や電力会社の規程で決まります。演習で迷ったときは、問題文に書かれた条件だけを根拠にしてください。

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