材料の性質を表す数字は、たいてい「何かと比べた値」です。導電率は、標準軟銅を100とした百分率。SF6 ガスの絶縁耐力は、空気の約3倍。アモルファスの鉄損は、けい素鋼板の約3分の1〜4分の1。比誘電率は、真空を1とした倍率です。何と比べたのかを取り違えると、数字は覚えているのに文の正誤を読み違えます。この回は、導電材料が1問、絶縁材料が2問、鉄心の材料が1問、半導体が1問です。
問題は5つとも、当サイトの書き下ろしです。過去の本試験から、文も数値も持ってきていません。外れの選択肢4つについては、どこで考え違いをするとその答えになるのかを、解答欄に1つずつ書きました。板の厚さや電圧などの条件は、解き方を追えるように当サイトで置いたもので、特定の機器の値ではありません。
材料ごとのくわしい説明と、規格の値の出どころは、解説記事の電気材料の種類と特性にあります。解答欄でわからない言葉が出てきたら、そちらに戻れます。追加の5問ずつは、第2回と第3回に分けてあります。
最初に|数字と基準
5問に出てくる数字を、「何と比べた値か」といっしょに並べます。
| 数字 | 比べる相手 | この回の値 |
|---|---|---|
| 導電率 | 20 ℃ の 標準軟銅 (100%) |
硬銅線 97% 硬アルミ線 61% |
| 比誘電率 | 真空 (1) |
空気は1.0 固体は問題文に |
| SF6 の 絶縁耐力 |
空気 | 約3倍 (平等電界) |
| 耐熱 クラス |
なし。 温度の数値 そのもの |
90から180、 その上に 200と220 |
| アモル ファスの 鉄損 |
けい素鋼板 の変圧器 |
約3分の1 〜4分の1 |
標準軟銅は、ものさしにするために決めた銅です。JIS C 3001 は、その抵抗率を20 ℃ で 1/58 Ω·mm2/m(約0.017241)と定めています。導電率が97%の線なら、抵抗率は 0.017241/0.97 で、標準軟銅より少し大きくなります。導電率と抵抗率は、片方が大きいほど、もう片方が小さくなります。
計算があるのは第1問と第3問です。どちらも掛け算と割り算だけで解けます。電力科目の範囲に「電気材料」が入っていることは、電気技術者試験センターの試験概要で確かめられます。
第1問|銅とアルミを比べる
架空電線に使う硬銅線と硬アルミ線を、20 ℃ で比べる。導電率は硬銅線を97%、硬アルミ線を61%とし、密度は銅を8.89、アルミを2.70(単位はどちらも g/cm3)とする。次の(1)〜(5)のうち、正しいものを1つ選べ。
- (1)導電率の100%は、銀の値である。銅もアルミも、100%を超えることはない。
- (2)硬銅線は、軟銅線より導電率が高い。架空電線に硬銅線を張るのは、抵抗を小さくするためである。
- (3)太さと長さが同じなら、硬アルミ線の抵抗は、硬銅線の約0.63倍である。
- (4)長さと質量が同じなら、硬アルミ線の抵抗は、硬銅線の約0.48倍である。
- (5)長さと抵抗が同じなら、硬アルミ線は、硬銅線より細くなる。
第2問|耐熱クラスの数字
JIS C 4003(2010年版)は、電気絶縁の耐熱クラスを、数値と指定文字で表している。指定文字が (a) E、(b) B、(c) F のクラスの数値[℃]を正しく組み合わせたものは、次のうちどれか。
- (1)(a) 120 (b) 130 (c) 155
- (2)(a) 130 (b) 120 (c) 155
- (3)(a) 120 (b) 130 (c) 180
- (4)(a) 105 (b) 120 (c) 130
- (5)(a) 120 (b) 130 (c) 150
第3問|空気の層と放電
2枚の平らな電極のあいだに、厚さ6.0 mm の固体の絶縁板(比誘電率5.0)をはさんだ。板と片方の電極のあいだには、厚さ0.30 mm の空気の層(比誘電率1.0)が残っている。電極にかける電圧を0から上げていくと、空気の層が放電を始めるのは、電圧が約何 kV になったときか。空気は、電界の強さが3.0 kV/mm になると放電を始めるものとする。電極の端の影響は考えない。
- (1)約0.9 kV
- (2)約3.6 kV
- (3)約4.5 kV
- (4)約18.9 kV
- (5)約90.9 kV
第4問|鉄心の材料
変圧器や電動機の鉄心に使う材料について述べた(1)〜(5)のうち、誤っているものを1つ選べ。
- (1)鉄心には、保磁力の小さい軟磁性材料を使う。保磁力の小さい材料ほど、ヒステリシス損が小さく、透磁率が大きい。
- (2)アモルファスの鉄心は、けい素鋼板の鉄心より鉄損が小さい。飽和磁束密度も高いので、同じ容量の変圧器を、小さく軽くつくれる。
- (3)鉄にけい素を加えると、抵抗率が上がって鉄損が下がる。ただし、けい素を増やすと硬くもろくなり、薄くのばしにくくなる。
- (4)方向性電磁鋼板は、圧延した向きに磁化しやすい。磁束の通る向きが決まっている、変圧器の鉄心に向いている。
- (5)鉄心を薄い板の重ね合わせにするのは、渦電流損を減らすためである。板の厚さを半分にすると、渦電流損は約4分の1になる。
第5問|半導体の性質
半導体を材料として見たときの性質について、次の5つの文のうち正しいものはどれか。
- (1)リンをシリコンに少し加えると、正孔が多数キャリアの p形半導体になる。
- (2)n形半導体は、自由に動ける電子が多いので、結晶の全体が負の電気を帯びている。
- (3)シリコンに不純物を加えると、電子の動きがじゃまされるので、抵抗率は加える前より大きくなる。
- (4)炭化けい素(SiC)は、シリコンよりバンドギャップが小さい。そのため、高温や高電圧で動かす素子には向かない。
- (5)不純物を含まないシリコンは、温度が上がると抵抗率が下がる。銅などの金属は、温度が上がると抵抗率が上がる。
5問の「引きかえ」
この回に出てきた材料を、良くなる数字と、引きかえに悪くなる数字で並べます。
| 材料 | 良くなる数字 | 引きかえ |
|---|---|---|
| 硬アルミ線 第1問 |
同じ抵抗で 質量が0.48倍 |
断面積が 1.59倍。 引っぱる力に 弱い |
| 硬銅線 第1問 |
引張強さが 大きい |
導電率は 軟銅線より 3%ほど低い |
| 固体の 絶縁板 第3問 |
空気より 強い電界に 耐える |
空気の層が 残ると、 そこが先に 放電する |
| けい素 第4問 |
抵抗率が 上がり、 鉄損が下がる |
増やすと 硬くもろい |
| 方向性 電磁鋼板 第4問 |
圧延の向きに 磁化しやすい |
向きの変わる 回転機には 使いにくい |
| アモル ファス 第4問 |
鉄損が 約3分の1 〜4分の1 |
飽和磁束 密度が低く、 大きく重い |
どの材料にも、右の列があります。第4問の(2)のように、右の列を消して良いことだけを並べた文は、疑って読めます。材料の名前と使いみちを覚えるときに、「そのかわり何が悪くなるか」を1つ添えておくと、正誤の文が読みやすくなります。
- 導電率:標準軟銅が100%。抵抗は導電率に反比例する。太さ、抵抗、質量のどれをそろえるかで、銅とアルミの倍率は変わる。
- 耐熱クラス:Y 90、A 105、E 120、B 130、F 155、H 180。その上は N 200、R 220。数値は温度そのもの。
- 層になった絶縁:電界は比誘電率の小さい層ほど強い。空気の層は、薄くても先に放電する。
- 鉄心:鉄損が小さいことと、飽和磁束密度が高いことの両方を求める。けい素、積層、方向性、アモルファスは、どれも何かと引きかえ。
- 半導体:キャリアの数は、温度と不純物で変わる。n形も p形も、結晶の全体は電気を帯びていない。
次に読むところ
- 解説記事:電気材料の種類と特性|導電率とIACS・絶縁材料と耐熱クラス・けい素鋼板と鉄損・永久磁石。規格の表の値、絶縁油と SF6、気泡にかかる電界、鉄損を2つに分ける計算がある。
- 同じテーマをもう10問:電気材料の種類と特性 ミニテスト第2回(けい素鋼板、渦電流損と周波数、ニクロム、軟磁性と硬磁性、n形の不純物)と、第3回(絶縁油、フェライト、p形のキャリア、積層鉄心、マンガニン)。
- 前のテーマ:電力系統の保護と安定(ミニテスト第1回つき)。接地のしかたと、地絡・短絡の電流。
- 次のテーマ:直流機の構造と原理(ミニテスト第1回つき)。機械科目の最初。鉄心と巻線でできた機械に入る。
- 第1問の続き:架空送電線路。鋼心アルミより線と、電線のたるみ。
- 第3問の続き:地中送電線路。ケーブルの絶縁体と、すき間をつくらない工夫。層が重なったときの静電容量はコンデンサの基礎と計算。
- 第4問の続き:電磁誘導とインダクタンス。ヒステリシス損と渦電流損の式。
- 第5問の続き:半導体と電子回路。キャリアの数の計算と、pn 接合。金属の温度係数は直流回路の基礎。
- 受験の計画:電験三種の日程と科目合格のしくみ。電力科目をいつ受けるかを決める。
- ほかの資格との順番は、ビルメン資格の学習ロードマップが目安になる。
出典と確認先
5つの問題、25の選択肢、表4点は、当サイトでつくりました。解説を書くにあたって読んだ資料は、次のとおりです。
- 本試験の問題と解答が載っているページ(試験センター公式) 本番で電気材料がどう聞かれたかを、年度ごとの原文で読める。
- 日本産業標準調査会の JIS検索 第1問の C 3001・C 3101・C 3102・C 3108、第2問の C 4003。番号を入れて探す。読むには利用者登録が要る。
- 日本銅センター「銅の特徴」 第1問の(1)。銅の導電率の順位と、標準軟銅を100%とする表し方。
- 日本電気技術者協会の講座「変圧器の銘板に学ぶ」 第2問。油入変圧器とモールド変圧器の耐熱クラス。
- 同協会の、CV ケーブルの絶縁劣化を扱った講座 第3問。空気層が先に放電することと、部分放電。
- 同協会の、送電線のコロナ放電を扱った講座 第3問。空気が絶縁の力を失う電位の傾き。
- パワーアカデミー電気工学用語集「SF6ガス」 第3問。空気と比べた絶縁耐力。
- 同用語集「アモルファス変圧器」 第4問の(2)。鉄損の小ささと、大きく重くなるわけ。
- 電気学会の用語解説「鉄損」(電力・エネルギー部門) 第4問の(1)と(5)。保磁力とヒステリシス損、板の厚さと渦電流損。
- JFE 技報 No.52 の高けい素電磁鋼板の論文(PDF) 第4問。鉄心材料に求める2つの性質と、けい素を増やせない理由。
- 日本機械学会の機械工学事典「けい素鋼」 第4問の(4)。方向性と無方向性。
- 日本電気技術者協会の講座「トランジスタの構造と基本特性(1)」 第5問の(1)(2)。n形と p形のでき方と、イオンになる不純物の原子。
- 電気学会の用語解説「SiC パワー半導体デバイス」 第5問の(4)。シリコンと比べたバンドギャップ。
リンク先は、2026年10月4日にすべて開き、引いた箇所を読みました。JIS は、本文を載せている公開サイトで読み、耐熱クラスの表はページの画像で確かめました。版は、C 3001 が1981年、C 3101 が1994年、C 3102 が1984年、C 3108 が2016年、C 4003 が2010年です。規格は改正されるので、使う前に最新の版を見てください。層が重なったときの電界の分かれ方は、電磁気の教科書にある関係から、当サイトで計算しました。空気が放電を始める電界を3.0 kV/mm の一定値としたのは、計算を追いやすくするための仮定です。第1問の3通りの比べ方の表と、第3問の比誘電率を変えた表も、当サイトの計算です。第5問のキャリアの数は、桁をつかむための概算です。筆者は、独学で電験三種の勉強をしている個人です。電線や変圧器を設計したり保守したりする仕事はしていません。実物の材料を選ぶときは、規格の原文とメーカーの資料に当たってください。
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