理論

過渡現象|RC・RL回路の時定数、初期値と最終値、切替の瞬間に連続する量【電験三種・理論】

三相交流回路までは、スイッチを入れてから十分に時間がたち、電圧と電流が同じ形をくり返すようになった状態(定常状態)だけを計算してきました。この記事では、その手前、スイッチを入れた・切った直後から落ち着くまでの変化を扱います。これを過渡現象と呼びます。電験三種の理論で扱うのは、主に抵抗とコンデンサ1つ、または抵抗とコイル1つの回路(一次回路)です。「1τで63%」「5τでほぼ100%」という数字だけを覚えていると、はじめからコンデンサに電圧が残っていたり、抵抗がいくつもあったりしたときに使い方を誤ります。ここでは回路の式から時定数を導き、どの量が切替の瞬間に連続するのか、最終値と時定数をどう決めるのかを、例題の数字で一つずつ追っていきます。

この記事で押さえること

  • コンデンサの電圧とコイルの電流は、切替の瞬間に飛ばない。コンデンサの電流、コイルの電圧、抵抗の電圧と電流は飛んでよい。
  • 直流電源の一次回路では、どの電圧・電流も「初期値」「最終値」「時定数」の3つで決まる同じ形の式になる。
  • 時定数は、変化の幅をはじめの変化の速さで割った時間。RC回路は τ=RC、RL回路は τ=L/R で、単位はどちらも秒。
  • 1τたつと、変化の幅の63.2%が進み、36.8%が残る。初期値が0でなければ「最終値の63%」ではない。
  • 5τで残りは0.67%。「落ち着いた」とみなせるかは、求める精度で決まる。
  • 抵抗がいくつもあるときは、コンデンサやコイルの端子から見た抵抗(電源を休ませたテブナン抵抗)を時定数に使う。
  • コイルの電流を切るときは、電流の逃げ道の抵抗が大きいほど速く減るが、そのぶん高い電圧が出る。
  • 正弦波の電源につないだ直後は、定常の正弦波に、時定数で消えていく直流分が重なる。

記号と前提。抵抗・コンデンサ・コイルは、値が電圧や電流によって変わらない理想的な素子とし、スイッチは一瞬で切り替わるものとします。切替の時刻を t=0 とし、直前を 0−、直後を 0+、十分に時間がたったあとを ∞ と書きます。小文字の v、i は時々刻々の値(瞬時値)です。素子の電圧と電流は、電圧の+側の端子から電流が入る向きを正にとります(受動符号規約)。電源は、後半の「正弦波の電源」の節を除いて直流です。

切替の瞬間に飛ばない量|コンデンサの電圧とコイルの電流

コンデンサの電流と電圧、コイルの電圧と電流には、次の関係があります(コンデンサの基礎と計算、電磁誘導とインダクタンス)。

iC=C×dvC/dt

vL=L×diL/dt

もしコンデンサの電圧が時間0で ΔV だけ飛んだとすると、dvC/dt は無限大になり、無限大の電流が必要になります。抵抗を通して充電する回路では、電流は電源電圧÷抵抗までしか流れないので、そのような電流は流れません。だからコンデンサの電圧は連続します。コイルの電流も同じで、電流が飛ぶには無限大の電圧が要ります。エネルギーで言えば、½CvC2 や ½LiL2 が一瞬で変わるには無限大の電力が要る、ということです。

一方、コンデンサの電流とコイルの電圧には、このような制約がありません。抵抗は状態をもたない素子なので、電圧も電流もその瞬間の回路で決まり、切替と同時に変わります。直流の定常状態では電圧も電流も変化しないので、dvC/dt=0 からコンデンサの電流は0、diL/dt=0 からコイルの電圧は0です。

素子 切替の瞬間と、直流の定常状態
コンデンサ 切替:電圧は連続。電流は飛んでよい。
定常:電流0。開放と同じ。
コイル 切替:電流は連続。電圧は飛んでよい。
定常:電圧0。短絡と同じ。
抵抗 切替:電圧も電流も飛んでよい。
定常:オームの法則のまま。

実物のコイルは巻線に抵抗 r があるので、直流の定常状態でも端子には「r×電流」の電圧が残ります。計算では、巻線の抵抗を理想のコイルと直列の抵抗として回路に入れます。

この表から、過渡現象が起きる条件も読めます。エネルギーをためる素子(コンデンサやコイル)があり、スイッチや電源の変化で状態が変わるときです。抵抗だけの理想的な回路では、電圧と電流は切替と同時に新しい値になり、途中経過はありません。

「連続する」は、抵抗などで電流や電圧が有限に抑えられている回路での話です。電圧の違う2つのコンデンサを抵抗なしで直接つなぐと、計算上は電圧が一瞬でそろいます。これは理想化の限界で、実際には配線の抵抗やインダクタンスによる、ごく短い過渡現象が起きています(そのときに失われるエネルギーはコンデンサの基礎と計算で扱っています)。

RC回路の式を立てて解く|τ=RC はどこから来るか

電圧 E の直流電源、抵抗 R、コンデンサ C を直列にし、t=0 でスイッチを閉じます。コンデンサには、はじめ V0 の電圧があるとします(0でもかまいません)。電流 i を電源からコンデンサへ流れる向きにとると、キルヒホッフの電圧則とコンデンサの関係から次の式が立ちます。

E=Ri+vC、i=C×dvC/dt

RC×dvC/dt+vC=E

この式の解は次のとおりです。

vC=E+(V0−E)e−t/(RC)

確かめ方は2つあります。t=0 を入れると e0=1 なので vC=V0 になり、はじめの電圧と一致します。また、微分すると e の項に −1/(RC) が掛かるので、それを RC 倍して vC に足すと e の項どうしが打ち消し合い、E だけが残ります。電流はオームの法則から i=(E−vC)/R={(E−V0)/R}e−t/τ です。コンデンサの電圧は V0 から連続して動き出しますが、電流は t=0 で0から (E−V0)/R へ一気に飛びます。

時定数は「変化の幅÷はじめの速さ」

t=0 での電圧の上がる速さは (E−V0)/(RC) です。もしこの速さのまま上がり続けたら、変化の幅 E−V0 を上り切るのにかかる時間は、ちょうど RC です。これが時定数 τ の意味で、グラフで言えば、t=0 で曲線に引いた接線が最終値の高さに届く時刻です。実際には、最終値に近づくほど抵抗にかかる電圧 E−vC が小さくなり、電流が減って上がり方がゆるやかになるので、τ の時点ではまだ63.2%しか進んでいません。

単位も確かめておきます。計量単位令は、ファラドを「一クーロンの電気量を充電したときに一ボルトの直流の電圧を生ずる二導体間の静電容量」と定めています。つまり F=C/V です。同じ表で、オームは1 A の電流が流れる2点間の電圧が1 V になる抵抗(Ω=V/A)、クーロンは1 A の電流が1秒間に運ぶ電気量(C=A·s)と定められています。

Ω×F=(V/A)×(C/V)

=C/A=(A·s)/A=s

電圧と電流が約分されて、秒だけが残ります。数値で扱うときは、kΩ×µF=103×10−6=10−3 なので「kΩ と µF を掛けるとミリ秒」と覚えておくと、桁を誤りにくくなります。

一般形|初期値・最終値・時定数の3つで決まる

RC回路の解をもう一度見ると、E は十分に時間がたったあとの電圧(最終値)、V0 は切替直後の電圧(初期値)です。そこで、次のように書き直せます。

一次回路の一般形(直流電源)

x(t)=x(∞)+{x(0+)−x(∞)}e−t/τ

x には、コンデンサの電圧だけでなく、同じ回路のどの電圧・電流を入れてもかまいません。直流電源と、エネルギーをためる素子1つの回路では、どの量も同じ τ で初期値から最終値へ指数関数で移ります。量ごとに違うのは、初期値と最終値だけです。手順は次の5つです。

  1. 切替前の回路で、コンデンサの電圧 vC(0−) またはコイルの電流 iL(0−) を求める。切替前が直流の定常状態なら、コンデンサは開放、コイルは短絡として解く。
  2. 切替直後は vC(0+)=vC(0−)、iL(0+)=iL(0−)。ほかの電圧・電流の初期値は、コンデンサをその電圧の電源、コイルをその電流の電源に置き換えた回路で求める。
  3. 最終値は、切替後の回路で、コンデンサを開放、コイルを短絡として求める。
  4. 時定数は、切替後の回路からコンデンサやコイルを外し、その端子から見た抵抗 Req を使って τ=ReqC または τ=L/Req。
  5. 一般形に入れる。途中でもう一度切り替わるなら、その時刻を新しい t=0 にして、1からくり返す。

「1τで63.2%」は、一般形の「変化の幅」について言えることです。初期値が0から増える場合に限って、最終値の63.2%と同じになります。初期値が0でないときや、減っていくときは、「初期値と最終値の差が36.8%に縮む」と読み替えてください。

計算例1|はじめに電圧が残っているコンデンサを充電する

設定。15 V に充電されている120 µF のコンデンサを、t=0 で15 kΩ の抵抗を通して60 V の直流電源につなぐ(コンデンサの+側を電源の+側へ)。時定数、はじめの電流、1τ後の電圧、50 V に達する時刻とそのときの電流を求める。

① τ=15×103×120×10−6=1.8 s

② 初期値 vC(0+)=15 V、最終値 vC(∞)=60 V。一般形から vC=60−45e−t/1.8[V]

③ i(0+)=(60−15)/15 kΩ=3.0 mA。はじめの上がる速さは 45/1.8=25 V/s

④ t=1.8 s:vC=60−45×0.368≒43.4 V。変化の幅45 V のうち63.2%が進んだ

⑤ 50 V まで:45e−t/1.8=10 から t=1.8×ln(45/10)≒2.71 s

⑥ そのときの電流:(60−50)/15 kΩ≒0.667 mA

よくある誤り。1τ後を 60×0.632≒37.9 V とするのは、初期値が0でないのに「最終値の63%」を使った誤りです。15 V から始まっているので、進むのは残りの45 V の63.2%です。50 V に達する時刻を 1.8×ln(60/10)≒3.23 s とするのも、0 V から充電したときの式を使った同じ種類の誤りです。

指数の値の表|「5τでほぼ落ち着く」の「ほぼ」は何%か

一般形の e−t/τ は、変化の幅のうち「まだ残っている割合」です。1から引いたものが「もう進んだ割合」です。

経過時間 残り 進んだ割合
0.5τ 60.7% 39.3%
0.693τ 50.0% 50.0%
1τ 36.8% 63.2%
2τ 13.5% 86.5%
3τ 4.98% 95.0%
4τ 1.83% 98.2%
4.61τ 1.00% 99.0%
5τ 0.674% 99.3%
6.91τ 0.100% 99.9%

指数関数は0にならないので、有限の時間で最終値に「ぴったり」届くことはありません。「5τでほぼ最終値」の「ほぼ」は、変化の幅の0.67%が残っているという意味です。1%の差を気にしなくてよい場面なら約4.6τで、0.1%まで詰めたいなら約6.9τで落ち着いたとみなせます。どこで打ち切るかは、求める精度で決まります。

ある値に達する時刻を逆に求めるときは、一般形を e−t/τ について解いて対数をとります。

t=τ×ln{(x(0+)−x(∞))/(x(t)−x(∞))}

分子は最初の差、分母はその時刻での差です。差が半分に縮むまでなら比が2なので t=τ ln2≒0.693τ、表の2行目の値です。4.61τ と6.91τ は、比が100と1,000のときの ln100≒4.61、ln1000≒6.91 から来ています。

放電するコンデンサのエネルギーは τ/2 で減る

抵抗だけで放電するコンデンサでは、電圧が vC=V0e−t/τ で減ります。エネルギーは電圧の2乗に比例するので ½CV02e−2t/τ、つまり時定数 τ/2 で減ります。1τたつと電圧は36.8%残っていますが、エネルギーは13.5%しか残っていません。減った分は抵抗で熱になっています。電源から空のコンデンサを充電すると電源のした仕事の半分が抵抗で熱になることは、コンデンサの基礎と計算で扱っています。

計算例2|充電の途中で、放電に切り替える

設定。0 V の80 µF のコンデンサを、t=0 で5.0 kΩ を通して48 V の電源につなぐ。t=0.60 s で電源と5.0 kΩ を外し、2.5 kΩ の抵抗だけにつなぎ替える。切替の直前と直後の電流、t=0.80 s の電圧、つなぎ替えてから電圧とエネルギーがそれぞれ半分になるまでの時間を求める。

① 充電の区間:τ1=5.0 kΩ×80 µF=0.40 s

② 0.60 s は1.5τ1 なので vC=48×(1−e−1.5)≒48×0.777≒37.3 V

③ 直前の電流:(48−37.3)/5.0 kΩ≒2.14 mA(コンデンサへ入る向き)

④ 直後の電圧は37.3 V のまま。電流は 37.3/2.5 kΩ≒14.9 mA で、向きはコンデンサから出る向きに変わる。電流は飛ぶが、電圧は飛ばない

⑤ 放電の区間:τ2=2.5 kΩ×80 µF=0.20 s。切替からの時間を t′=t−0.60 s として vC=37.3e−t′/0.20

⑥ t=0.80 s(t′=τ2):vC≒37.3×0.368≒13.7 V

⑦ 電圧が半分になるのは t′=0.20×ln2≒0.139 s、エネルギーが半分になるのはその半分の 0.10×ln2≒0.069 s

検算:つなぎ替えたときのエネルギーは ½×80×10−6×37.32≒55.6 mJ、0.80 s では 55.6×e−2≒7.53 mJ。電圧の比の2乗 (13.7/37.3)2≒0.135 と一致します(途中の値は丸めずに計算)。

よくある誤り。放電の区間に t=0.80 s をそのまま入れて 37.3e−0.80/0.20 とすると約0.68 V になってしまいます。区間が変わったら、時間の原点を切替の時刻に取り直します。

RL回路|τ=L/R で、R を大きくすると速くなる

電圧 E の直流電源、抵抗 R、コイル L を直列にし、t=0 でスイッチを閉じます。コイルには、はじめ I0 の電流が流れていたとします。キルヒホッフの電圧則から次の式が立ちます。

E=Ri+L×di/dt

(L/R)×di/dt+i=E/R

RC回路の式と同じ形で、vC の位置に i、RC の位置に L/R、E の位置に E/R が入っています。したがって解も同じ形になります。

i=E/R+(I0−E/R)e−t/τ

τ=L/R

コイルの電圧は vL=E−Ri=(E−RI0)e−t/τ で、切替の瞬間に E−RI0 へ飛び、最後は0になります。

単位は、計量単位令がヘンリーを「一秒間に一アンペアの割合で変化する直流の電流が流れるときに一ボルトの起電力を生ずる閉回路のインダクタンス」と定めていることから、H=V·s/A です。

H/Ω=(V·s/A)/(V/A)=s

R が大きいほど速くなる理由

はじめの電流が0の場合で考えます。t=0 では電流が0なので抵抗の電圧も0で、電源の電圧はすべてコイルにかかります。電流の増える速さは di/dt=E/L で、R によりません。一方、最終値は E/R なので、R が大きいほど小さくなります。変化の幅÷はじめの速さは (E/R)÷(E/L)=L/R。同じ速さで走り出して、ゴールが近いほど早く着く、というのが R を大きくすると速くなる理由です。RC回路では逆に、はじめの電流が R に反比例して小さくなるので、R が大きいほど充電は遅くなります。

「抵抗を大きくすると時定数は大きくなる」と一括りにしないでください。RC回路とRL回路で向きが逆です。R と C を両方2倍にすれば RC は4倍になり、L と R を両方2倍にすれば L/R は変わりません。

抵抗がいくつもあるとき|時定数に入るのは端子から見た抵抗

回路に抵抗が2本以上あると、どの抵抗を τ に入れるかで迷います。答えは、切替後の回路からコンデンサ(またはコイル)を外し、独立な電源を休ませて(電圧源は短絡、電流源は開放)、外した端子から見た抵抗です。これは直流回路の解析で扱ったテブナン抵抗そのものです。

理由は、コンデンサから見ると、残りの回路は必ず「電圧 Vth の電源と抵抗 Rth の直列」に置き換えられるからです(テブナンの定理)。置き換えれば、はじめに解いた R と C の直列回路と同じ形になり、最終値は Vth、時定数は RthC です。

注意点が2つあります。1つは、時定数は切替後の回路で決まることです。充電と放電で電流の通り道が違えば、時定数も違います。もう1つは、従属電源(ほかの場所の電圧や電流に比例する電源)がある回路では電源を休ませられないことです。その場合は直流回路の解析と同じく、開放電圧÷短絡電流で Rth を求めます。

計算例3|分圧回路につないだコンデンサ

設定。30 V の直流電源に20 kΩ(R1)と30 kΩ(R2)を直列につなぎ、R2 と並列に50 µF のコンデンサをつなぐ。コンデンサは空で、t=0 でスイッチを閉じる。コンデンサの電圧の最終値と時定数、電源から流れる電流の変化を求める。十分たってから電源だけを切り離したときの、放電の時定数も求める。

① 最終値:コンデンサを開放すると分圧になり vC(∞)=30×30/(20+30)=18 V

② 時定数:電源を短絡すると、コンデンサの端子から見て20 kΩ と30 kΩ が並列。Req=20×30/(20+30)=12 kΩ、τ=12 kΩ×50 µF=0.60 s

③ vC=18(1−e−t/0.60)[V]。0.60 s で約11.4 V、1.2 s で約15.6 V

④ 電源の電流 i1:0+ ではコンデンサが0 V なので R2 には電流が流れず、i1(0+)=30/20 kΩ=1.5 mA。最終値は 30/50 kΩ=0.60 mA。同じ τ で i1=0.60+0.90e−t/0.60[mA]

⑤ 電源を切り離すと、コンデンサは R2 だけを通して放電する。τ=30 kΩ×50 µF=1.5 s。充電の2.5倍

よくある誤り。回路図で目についた20 kΩ だけを使うと τ=1.0 s、20 kΩ と30 kΩ を足すと 2.5 s になります。最終値を電源電圧の30 V とするのも、R2 で分圧されていることを見落とした誤りです。電源の電流 i1 のように、コンデンサ以外の量も同じ τ で動くことを④で確かめてください。

コイルの電流を切るとき|逃げ道の抵抗で、電圧と減り方が決まる

電磁誘導とインダクタンスでは、コイルの電流を急に断つと、電源電圧と関係なく高い電圧が出ることを見ました。電流が連続しようとするのに、行き場がないからです。実際の回路では、コイルと並列に放電用の抵抗やダイオードを入れて、スイッチを開いたあとの電流の逃げ道を作ります。逃げ道があれば、その電流の減り方は、ここまでの一般形で計算できます。

巻線の抵抗が r、インダクタンスが L のコイルに、放電用の抵抗 Rd を並列につなぎ、電源 E から電流を流しておきます。スイッチを開くと、コイルの電流 I0=E/r は連続して、今度は Rd を通って回ります。電源から切り離されたので最終値は0、電流の通り道の抵抗は r+Rd です。

τ=L/(r+Rd)

開いた直後のコイルの端子の電圧:I0Rd

(電源をつないでいたときと逆向き)

スイッチの接点にかかる電圧:E+I0Rd

Rd を大きくすると時定数が短くなって電流は速く消えますが、そのぶん開いた直後の電圧が高くなります。Rd を小さくすると電圧は低く抑えられますが、電流はゆっくり減ります。どちらを優先するかの選択です。また、Rd は電源をつないでいるあいだも E/Rd の電流を流し続けるので、その分の電力が熱になります。

ダイオードを、電源をつないでいるときには電流を通さない向きに入れておくと、ふだんの損失はほとんどありません。スイッチを開くとダイオードが電流を通し、コイルの端子の電圧はダイオードの順方向の電圧(1 V 前後)に抑えられます。そのかわり、電流の通り道に残るのは巻線の抵抗 r とダイオードだけなので、電流はゆっくり減ります。リレーのコイルにダイオードを入れると、接点がもとに戻るまでの時間が延びることがあるのはこのためです。ダイオードが一方向にしか電流を通さないしくみは、次のテーマ半導体と電子回路で扱います。

計算例4|放電用の抵抗の大きさを変えて比べる

設定。24 V の直流電源で、L=0.60 H、巻線の抵抗 r=8.0 Ω のコイルに電流を流しておく。コイルと並列に放電用の抵抗 Rd を入れておき、スイッチを開く。Rd が40 Ω と400 Ω のときで、時定数、開いた直後のコイルの端子の電圧、スイッチの接点の電圧、電流が0.30 A まで減る時間を比べる。

① 開く前:I0=24/8.0=3.0 A(Rd にも別に 24/Rd が流れているが、開くと電源とともに切り離される)

② 40 Ω:τ=0.60/(8.0+40)=12.5 ms。端子の電圧 3.0×40=120 V(逆向き)、接点は 24+120=144 V

③ 400 Ω:τ=0.60/408≒1.47 ms。端子の電圧 3.0×400=1,200 V、接点は1,224 V

④ 0.30 A は3.0 A の10分の1なので t=τ×ln10。40 Ω で約28.8 ms、400 Ω で約3.39 ms

⑤ エネルギー:½×0.60×3.02=2.7 J。同じ電流が r と Rd を流れるので、抵抗の比で分かれる。40 Ω なら Rd に 2.7×40/48=2.25 J、巻線に0.45 J

⑥ ふだんの損失:242/Rd。40 Ω で14.4 W、400 Ω で1.44 W

ダイオードに替えた場合も比べておきます。ダイオードの電圧を0.8 V で一定とみなした概算です。

逃がし方 τ 直後の電圧 0.30 Aまで
40 Ω 12.5 ms 120 V 約28.8 ms
400 Ω 1.47 ms 1,200 V 約3.39 ms
ダイオード 約75 ms 約0.8 V 約154 ms

ダイオードの行の τ は L/r=0.60/8.0 です。ダイオードの電圧が一定の分だけ電流の減り方は純粋な指数関数からずれ、i=(3.0+0.1)e−t/0.075−0.1[A](0.1 A は 0.8/8.0)として求めました。逃げ道がまったくなければ、電流を一瞬で0にしようとして接点に火花が飛びます。どの行を選ぶかは、電圧を抑えたいのか、速く切りたいのか、ふだんの損失を減らしたいのかで決まります。

正弦波の電源につないだ直後|定常の波に、消えていく直流分が重なる

一般形の「最終値」は、直流電源なら一定の値ですが、正弦波の電源なら十分に時間がたったあとの正弦波(RLC回路とインピーダンスで求めた定常の電流)になります。一般形はそのまま広げられます。

x(t)=xs(t)+{x(0+)−xs(0)}e−t/τ

xs(t) は定常の波形、xs(0) はそれを t=0 で読んだ値です。RL直列回路では、コイルの電流ははじめ0です。切替の瞬間に定常の波形が0でない値にあれば、その差を埋める直流分が生まれ、時定数 τ で消えていきます。定常の電流がちょうど0になる瞬間に入れれば、直流分は生まれず、はじめから定常の波形になります。

計算例5|RL回路を100 V・50 Hz の電源につなぐ

設定。R=2.0 Ω、L≒31.8 mH(50 Hz で ωL=10 Ω)の直列回路を、実効値100 V・50 Hz の電源に、電圧が0から正へ向かう瞬間につなぐ。定常の電流、直流分、最初の山の電流を求める。

① |Z|=√(2.02+102)≒10.2 Ω、φ=tan−1(10/2.0)≒78.7°、τ=L/R≒15.9 ms

② 定常の電流:実効値 100/10.2≒9.81 A、最大値 √2×9.81≒13.9 A。is=13.9 sin(ωt−78.7°)[A]

③ t=0 の定常の値は 13.9×sin(−78.7°)≒−13.6 A。実際の電流は0なので、差の+13.6 A が直流分になる

④ i=13.9 sin(ωt−78.7°)+13.6e−t/15.9 ms[A]

⑤ 最初の山は t≒9.0 ms。定常の部分が約13.8 A、直流分が約7.7 A 残っていて、合計約21.5 A。定常の最大値の約1.55倍

⑥ 5τ(約80 ms、4周期)後の直流分は 13.6×0.0067≒0.09 A

⑦ 電圧が0から78.7°進んだ瞬間(t≒4.37 ms)に入れると、定常の電流が0なので直流分は出ない

読み方。コイルの電流は連続するので、定常の波形の途中から急に始めることはできません。そのずれが直流分として現れます。φ が90°に近い(R が小さい)回路ほど、入れる瞬間しだいで直流分が大きくなり、τ も長いので消えるのが遅くなります。電力系統で短絡が起きたとき、最初の山の電流が交流分だけから求めた値より大きくなることがあるのも、同じしくみです(短絡の種類と電流の考え方は電力系統の保護と安定)。

よく聞く言い方と、正しい読み方

よく聞く
言い方
正しい読み方
1τで63% 変化の幅の63.2%が進む。
初期値が0のときだけ、
最終値の63.2%と同じ。
5τで100% 残りは0.67%。
どこで打ち切るかは、
求める精度で決める。
R が大きい
ほど遅い
RC回路はそのとおり。
RL回路は逆で、速くなる。
入れた瞬間
の電流は0
RC回路では
(E−V0)/R が流れる。
RL回路は、コイルの
直前の電流のまま。
コイルの
電圧も連続
連続するのは電流だけ。
電圧は飛んでよい。
時定数は
1つだけ
切替後の回路で決まる。
充電と放電で変わりうる。

理解度チェック

各問の解説では、正解だけでなく、残りの4つの選択肢がどこで間違えているかも説明しています。問題は当サイトで作ったもので、過去の試験問題を写したものではありません。

確認1|向きが変わる電流が0を横切る時刻

0.90 H の理想コイルと18 Ω の抵抗の直列回路が36 V の直流電源につながり、2.0 A が流れて落ち着いている。t=0 で、電源を、電流を反対向きに流そうとする18 V の直流電源に一瞬で切り替えた。電流の正の向きははじめの2.0 A の向きとし、コイルの電圧もこの向きについての受動符号規約で表す。電流が0になる時刻と、切替直後のコイルの電圧の組として、正しいものを1つ選べ。

  1. (1)54.9 ms、−54 V
  2. (2)34.7 ms、−54 V
  3. (3)54.9 ms、−18 V
  4. (4)22.0 s、−54 V
  5. (5)54.9 ms、+54 V

確認2|抵抗が3本ある回路の時定数

45 V の直流電源に6.0 kΩ の抵抗 R1 を直列につなぎ、その先の点 A と電源の負極のあいだに、12 kΩ の抵抗 R2 と、「1.0 kΩ の抵抗 R3 と20 µF のコンデンサの直列」とを並べてつなぐ。コンデンサは空で、t=0 でスイッチを閉じる。時定数、t=0.20 s のコンデンサの電圧、切替直後にコンデンサへ流れ込む電流の組として、正しいものを1つ選べ。

  1. (1)0.10 s、25.9 V、6.0 mA
  2. (2)0.14 s、22.8 V、6.0 mA
  3. (3)0.10 s、38.9 V、9.0 mA
  4. (4)0.10 s、25.9 V、0 mA
  5. (5)0.02 s、30.0 V、45 mA

確認3|正しい記述を選ぶ

直流電源の一次回路について、正しいものを1つ選べ。

  1. (1)RC回路で抵抗だけを2倍にすると、同じ割合まで充電するのにかかる時間は半分になる。
  2. (2)RL回路で、電源の電圧を変えずに抵抗だけを2倍にすると、時定数は半分になり、最終の電流も半分になる。
  3. (3)抵抗だけで放電しているコンデンサのエネルギーは、電圧と同じ時定数で減る。
  4. (4)切替から5τたてば、どの電圧と電流も最終値にぴったり一致する。
  5. (5)切替の瞬間には、コイルの電流と同じように、コイルの電圧も連続する。

まとめ

  • コンデンサの電圧とコイルの電流は、切替の瞬間に連続する。それ以外の量は飛んでよい。直流の定常状態では、コンデンサは開放、コイルは短絡と同じ。
  • 一次回路のどの量も x(t)=x(∞)+{x(0+)−x(∞)}e−t/τ。初期値・最終値・時定数の3つを先に決める。
  • 時定数は、変化の幅÷はじめの速さ。τ=RC、τ=L/R で、単位は秒。R を大きくすると、RCは遅く、RLは速くなる。
  • 1τで変化の幅の63.2%、5τで99.3%。残りの割合から t=τ ln(最初の差/その時刻の差) で時刻が出る。エネルギーは τ/2 で減る。
  • 抵抗が複数あれば、切替後の回路で素子の端子から見たテブナン抵抗を使う。充電と放電で時定数が違うことがある。
  • コイルの電流を切るときは、逃げ道の抵抗が大きいほど速く減り、そのぶん高い電圧が出る。ダイオードは電圧を抑えるが、減るのは遅い。
  • 正弦波の電源につないだ直後は、定常の波形との差が直流分になり、τ で消える。

演習と、前後のテーマ

本文の出典は2026年9月29日に原文を開いて確認しています。オーム・ファラド・ヘンリー・クーロンの定義は、計量単位令の別表第一(第2条が定める表。e-Gov法令検索に載っている現行の条文)から引きました。理論科目の範囲と解答方式は、試験の実施機関である電気技術者試験センターの公表ページで確認しました。例題と確認問題で使った電圧・抵抗・容量・インダクタンスは、計算の流れが見えやすい数字を当サイトで選んだもので、特定の機器の値ではありません。リレーや電磁接触器のコイルに入れる素子は、機器の取扱説明書やメーカーの資料で確かめてください。

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。

-理論