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パワーエレクトロニクス|整流回路・インバータ・チョッパの公式と条件【電験三種】

パワーエレクトロニクスは、半導体をスイッチとして使い、電気を必要な形へ変える技術です。交流を直流へ、直流を交流へ、ある直流電圧を別の直流電圧へ変換します。

計算では「変換の種類」「電圧が平均値か実効値か」「負荷にコイルやコンデンサがあるか」を順に確認しましょう。整流の係数だけを覚えると、違う条件に同じ式を当てはめてしまいます。

電験三種・機械の基礎として、素子の働きから整流・位相制御・PWM・チョッパへ進みます。交流の実効値は交流回路の基礎、素子の仕組みは半導体と電子回路で復習できます。本文の表・計算例・確認問題は学習用の独自構成です。

1.電力変換の見取り図|入口と出口を比べる

ACは交流、DCは直流を表します。直流には、極性が変わらなくても大きさが波打つ脈流も含まれます。「直流出力」と書かれていても、完全に平らな波形とは限りません。

変換 回路の呼び名 何を変えるか
AC → DC 整流器・順変換器 交流を一方向の電圧・電流へ
DC → AC インバータ・逆変換器 直流から交流を作る
DC → DC 直流チョッパ 直流電圧を上げる・下げる
AC → AC サイクロコンバータなど 交流から別の周波数の交流へ

コンバータは広い意味では電力変換器全体を指しますが、インバータと対に説明するときはAC→DCの整流部を指すことがあります。また、AC→ACには、周波数を変えず実効電圧を調整する交流電力調整器もあります。AC→ACをすべてサイクロコンバータと呼ぶわけではありません。

例えばビルの送風機を動かすインバータ装置では、商用交流をいったん直流にしてから、電動機用の交流を作る構成があります。装置全体の入口が交流でも、その中のインバータ回路はDC→ACです。

商用交流
↓ 整流部
直流部・平滑回路
↓ インバータ部
電動機へ送る交流

変換方式の分類は日本電気技術者協会「電力変換装置」で確認できます。

2.半導体素子|オンにする方法とオフにする方法

自己消弧とは、制御端子からの信号で主電流を遮断できる性質です。普通のサイリスタ(SCR)と、ゲートでオフにもできるGTOを区別します。

素子 制御のしかた 押さえる点
ダイオード ゲートなし 順方向に流し、逆方向を阻止
通常のSCR ゲート電流でオン ゲートだけではオフにできない
GTO 正のゲート電流でオン、負でオフ 自己消弧ができるサイリスタ
IGBT ゲート・エミッタ間電圧でオン/オフ MOSゲートとバイポーラ動作
パワーMOSFET ゲート・ソース間電圧でオン/オフ 多数キャリアで動作

表のオン/オフは、定格内で所定の駆動条件を満たすときの働きです。素子がオンの間にも電圧降下があり、切り替わる瞬間にも損失が生じます。電圧制御形でもゲートの充放電には電流が必要で、「制御回路の電力がいつでもゼロ」という意味ではありません。

サイリスタは、ゲートを離しても導通が続く

SCRはアノードA・カソードK・ゲートGの3端子を持ちます。通常のゲート点弧では、AからKへ順方向電圧を加え、必要なゲート電流を流してオンにします。主電流が十分に立ち上がれば、ゲート信号を取り去っても導通を保ちます。

  • ラッチング電流:点弧直後にゲート信号を取り去っても、導通を続けるために必要な主電流。
  • 保持電流:導通が確立した後、その状態を保つために必要な主電流。

通常のSCRをオフにするには、外部回路で主電流を保持電流より小さくし、遮断能力が回復する時間も確保します。交流回路では電源の働きで電流がゼロへ向かう自然転流を利用でき、直流回路では別の回路で電流を移す強制転流を用いる場合があります。転流とは、電流の流れる経路を切り替えることです。

したがって「電流がゼロになるまで待つ」だけでは説明不足です。負荷が誘導性なら、電源電圧がゼロになっても電流がすぐゼロになるとは限りません。また、ゲートに負の信号を与えてオフにするGTOの性質を、通常のSCRへ当てはめないようにします。

電流の定義はメーカー資料のSTMicroelectronics AN302(保持電流、英語PDF)とAN303(ラッチング電流、英語PDF)、素子の分類は日本電気技術者協会「電力用半導体素子の種類と特性」を参照できます。

IGBTとMOSFETは、用途の条件で使い分ける

IGBTには、バイポーラ動作によって高耐圧・大電流での導通損失を抑えやすい特性があります。一方、ターンオフ時には蓄積されたキャリアによるテール電流が残り、スイッチング損失に影響します。MOSFETは多数キャリアで動作し、高周波での切替に向く特性があります。

ただし「IGBTがどの用途でも最多」「MOSFETは小容量にしか使えない」とは断定できません。必要な耐圧、電流、切替周波数、導通損失、冷却条件で選びます。SiC MOSFETのように材料が異なる素子もあるため、名称だけで用途の上限を決めないことが大切です。比較は東芝「MOSFETとIGBTの違い」で確認できます。

3.整流の平均電圧|0.45・0.9・1.35・2.34の条件

以下は正弦波電源・理想ダイオードの計算です。素子や配線の電圧降下と、電源側インダクタンスによる転流の重なりを無視します。まずは平滑コンデンサのない抵抗負荷を考えます。

V は単相の入力実効電圧、VL は三相の線間実効電圧、Vph は三相電源の相・中性点間の実効電圧です。対称三相では VL=√3Vph。Ed は出力電圧の時間平均値で、実効値ではありません。

回路 平均電圧 Ed 脈動の基本周波数
単相半波
ダイオード1個
(√2/π)V
≒0.45V
f
単相全波ブリッジ
ダイオード4個
(2√2/π)V
≒0.90V
2f
三相全波ブリッジ
ダイオード6個
(3√2/π)VL
≒1.35VL
≒2.34Vph
6f

f は入力の電源周波数です。全波整流は負の半波を正側へ折り返すので、単相半波の半分になるのは脈動の周期です。電圧の振れ幅やリプル率が一律に半分になる、という意味ではありません。50 Hzなら単相全波の脈動は100 Hz、三相全波は300 Hzです。

三相の1.35と2.34は別回路の係数ではありません。1.35×√3≒2.34 なので、同じ三相ブリッジでも掛ける電圧の基準が違うのです。「三相入力200 V」とだけあれば線間値を指すことが多いものの、設問の定義を必ず読みます。

係数は、波形の面積を周期で割った値

正弦波の最大値を Vm=√2V とします。半波整流では正の半周期だけ電圧が出るため、角度 θ を使った平均は次のようになります。積分の角度はラジアンです。

半波:Ed=(1/2π)
×∫0π Vmsinθ dθ
=Vm/π≒0.45V

全波:同じ山が1周期に2つ
Ed=2Vm/π≒0.90V

三相ブリッジでは、瞬時電位が最も高い相から最も低い相へ電流が流れ、出力はその線間電圧になります。山の頂点を θ=0 に取り、60°分を平均すると、(3/π)∫−π/6π/6 √2VLcosθ dθ
=(3√2/π)VL です。ここからも、1.35に掛けるのが線間実効値だと分かります。

波形と回路はIITのNPTEL教材(単相整流、英語)とIIT Delhi Virtual Labs(三相ブリッジ、英語)を確認先にしています。後者は誘導性負荷の連続電流を扱いますが、上記の理想条件では同じ平均電圧の式になります。

練習例1|線間240 Vの三相ブリッジ

対称三相の線間実効電圧が240 V、周波数60 Hzです。上記の理想ダイオードブリッジ・抵抗負荷の平均出力電圧と、脈動の基本周波数を求めてください。

平滑コンデンサを付けたら、0.9倍をそのまま使わない

単相100 Vを全波整流しただけなら、平均は約90.0 Vですが、実効値は100 Vです。負の半波を折り返しても、2乗して平均する実効値は変わらないためです。例えば10 Ωの抵抗の平均消費電力は 1002/10=1000 W で、平均電圧90 Vを2乗した810 Wではありません。

出力に平滑コンデンサを接続すると、波形の山で充電し、山と山の間で負荷へ放電します。理想的な無負荷では、単相100 Vの出力は最大値の約141.4 Vへ近づきます。実際の平均電圧は負荷電流、容量、素子の電圧降下などで変わります。「単相全波だから常に90 V」ではありません。

平均値・実効値・コンデンサ平滑の違いは、試験センターの平成29年度電験二種二次・標準解答(機械・制御の問3、PDF15ページ)でも確認できます。二種の資料ですが、ここで参照するのは共通する整流の原理です。電力と実効値は交流電力と力率改善で復習できます。

4.サイリスタの位相制御|cosαはどんなとき使える?

点弧角 α は、基準となる点弧時刻からどれだけ遅らせてオンにするかを表す電気角です。ここでは単相全制御ブリッジの正弦波電源を扱い、4個のSCRを適切な順序で点弧します。理想素子で転流の重なりを無視しても、負荷電流が途中で途切れるかによって式が変わります。

単相全制御ブリッジの負荷 平均出力電圧 波形の違い
十分なインダクタンスがあり、電流が連続 Ed=Ed0cosα 点弧後、各組がπだけ導通
純抵抗のみ Ed=(Ed0/2)
×(1+cosα)
αからπまで導通し、次の点弧まで0

単相では Ed0=2√2V/π です。連続電流なら、平均する区間はαからα+πまでで、正弦波の負の部分も含まれます。その積分をπで割ると Ed0cosα になります。純抵抗では電圧がゼロになるπで電流も切れるため、αからπまでの積分になり、(Ed0/2)(1+cosα) となります。

三相全制御ブリッジでも、連続電流・転流の重なり無視なら Ed=Ed0cosα を使えます。このときの Ed0=3√2VL/π は線間電圧基準です。サイリスタとダイオードを組み合わせる混合ブリッジや、環流ダイオード付き回路へ無条件に流用しません。

計算例|同じ180 V、60°でも結果は違う

単相実効電圧180 V、α=60°なら、Ed0≒162.1 V です。

  • 電流が連続:162.1×cos60°≒81.0 V
  • 純抵抗負荷:(162.1/2)×(1+0.5)
    ≒121.5 V

α=90°でも、前者の式は0 V、後者の式は約81.0 Vです。「90°なら必ず0」とは言えません。負荷が違うと、電源電圧が負になった後にも電流が続くかが違うためです。

連続電流の式ではα>90°で平均電圧が負になります。ただし、抵抗だけで勝手に電力が交流側へ戻るわけではありません。直流側の発電機や電源からエネルギーが供給され、電流の向きと転流に必要な時間が確保されるなど、逆変換として成立する条件が必要です。

負荷別の波形はIIT Delhi Virtual Labs(単相制御ブリッジ、英語)で確認できます。

5.インバータとPWM|パルスの幅で交流を作る

インバータは、直流電源を負荷へつなぐ向きを切り替えて交流を作ります。例えば単相のHブリッジでは、向かい合うスイッチの組を交互にオンにして、負荷へ正・負の電圧を加えます。

PWM(パルス幅変調)では、細かいパルスの幅を変えて出力を調整します。正弦波PWMなら、目標となる正弦波と、より高い周波数の三角波などを比較してオン時間を決めます。目的の交流成分は正弦波に近づけられますが、スイッチ直後の電圧はパルス列で、高周波成分も含みます。

電動機のインダクタンスやフィルタにより、電流の高周波の変化が抑えられます。「パルスの電圧がそのまま完全な正弦波になる」と考えないことが大切です。出力の基本周波数と、素子が細かく切り替わるスイッチング周波数も別の量です。

誘導電動機では周波数を変えると同期速度が変わります。基本的なV/f制御は、基底周波数以下の一定磁束を狙う領域で、電圧と周波数の比をおおむね一定に保つ考え方です。低速では巻線抵抗の電圧降下、基底周波数を超える領域では電圧上限も関係します。詳しくは誘導電動機の始動と速度制御へ進んでください。

構成とPWMの原理は日本電気技術者協会「インバータ機器(1)基礎」が確認先です。

6.直流チョッパ|通流率から出力を求める

チョッパは直流を短い時間ごとにオン/オフして調整します。周期を T、オン時間を Ton、オフ時間を Toff とすると、T=Ton+Toff です。通流率(デューティ比)γは、周期のうちオンになっている割合です。

γ=Ton/T (無次元)

降圧の平均出力:
Eout=γEin [V]

この降圧式は、出力がオン中に Ein、オフ中に0となる理想的なパルス波形の平均です。1周期の電圧の面積 EinTon を T で割れば求められます。平滑用コイル・コンデンサを備えた降圧コンバータでも、理想素子・定常状態・コイル電流が連続なら、平滑後の平均出力に同じ式を使えます。

コイルは電流を急には止められないため、スイッチがオフの間も流れる道が必要です。基本回路では環流ダイオードがその道を作ります。平滑部のコイルの平均電圧が0になる条件は、γ(Ein−Eout)
+(1−γ)(−Eout)=0 で、整理すると同じ降圧式に戻ります。

練習例2|200 Vを通流率0.6で降圧する

入力200 Vの理想降圧チョッパで、通流率γ=0.6とします。上記の平均電圧の式を使えるとき、平均出力電圧を求めてください。

昇圧はコイルにためたエネルギーを出力へ送る

基本的な昇圧チョッパでは、オン中に入力電源からコイルへエネルギーを蓄え、オフ中にコイルの電圧と入力電圧を合わせて出力側へ送ります。理想素子・定常状態・コイル電流が連続する場合、コイルの1周期平均電圧が0なので、次の関係になります。

γEin+(1−γ)
×(Ein−Eout)=0

昇圧:Eout=Ein/(1−γ)
0≦γ<1

入力48 V、γ=0.25なら、48/(1−0.25)=64 V です。損失のない理想回路で出力電流3 Aなら出力192 W、平均入力電流は 192/48=4 A。電圧が上がっても電力が増えるわけではありません。

γを1へ近づければ実機で無限の電圧が得られる、とは考えません。実際には損失・素子定格・制御範囲があり、軽負荷などでコイル電流が途切れると、この単純な電圧比の式から外れる場合もあります。

太陽光発電では、昇圧部は直流電圧を調整し、系統へ交流を送るには別にインバータなどが必要です。回生制動も、電動機からのエネルギーを受け取る電源や負荷と、対応する回路構成があって成立します。チョッパの基本構成は日本電気技術者協会「パワーエレクトロニクスの応用」を参照できます。

7.確認問題4問|計算の前提も答える

確認問題1|通常のSCRをオフにする条件

定格内で導通している通常のSCRについて、適切な説明はどれでしょうか。

  1. (1)ゲート電流を取り去れば、主電流が大きくても直ちにオフになる。
  2. (2)ゲート・エミッタ間電圧でオフにする。
  3. (3)外部回路で主電流を保持電流未満にし、遮断能力の回復時間も確保する。
  4. (4)交流電源電圧がゼロなら、誘導性負荷の主電流も必ず同時にゼロになる。
  5. (5)通常のSCRは、主電流を正逆どちらにも流せる双方向素子である。

確認問題2|単相全波整流の平均値

実効値 V の正弦波を、理想ダイオード4個の単相ブリッジで整流します。平滑コンデンサのない抵抗負荷で、電源インピーダンスを無視すると、平均出力電圧はおよそどれでしょうか。

  1. (1)0.45V
  2. (2)0.90V
  3. (3)1.35V
  4. (4)1.80V
  5. (5)2.34V

確認問題3|PWMインバータの出力波形

正弦波PWMで制御する電圧形インバータの説明として、適切なものはどれでしょうか。

  1. (1)スイッチ直後の電圧も、常に高周波成分のない正弦波である。
  2. (2)出力の基本周波数と、スイッチング周波数は同じである。
  3. (3)IGBTだけが使用でき、MOSFETでは構成できない。
  4. (4)パルス幅を変えて目的の交流成分を作り、負荷のインダクタンスなどが電流の高周波成分を抑える。
  5. (5)直流を交流へ変換するには、回転する発電機が必須である。

確認問題4|入力300 V、通流率0.4の降圧

理想的な降圧チョッパの入力は300 V、通流率は0.4です。定常状態で、平滑用コイルの電流が連続するとき、平均出力電圧はいくらでしょうか。

  1. (1)60 V
  2. (2)90 V
  3. (3)120 V
  4. (4)150 V
  5. (5)180 V

8.次の学習と公式の確認先

整流では波形の平均を取り、電力では実効値や瞬時電力を考えます。制御整流は負荷電流の連続性、チョッパはオン時間の割合を確認すると、式の選び間違いを減らせます。

試験の原問題と公表解答は電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験の問題と解答」から確認できます。本文は各節の一次資料をもとに独自に説明・検算したもので、資料の文章・図表や過去問を転載していません。

2026年10月24日確認・改訂。整流の電圧基準、負荷別の位相制御、半導体のオン/オフ、PWMとチョッパの条件を確認しました。運営者は資格を独学中の個人です。

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