理論

直流回路の基礎|オームの法則・合成抵抗・分圧と分流・電力【電験三種・理論】

ここから回路の話に入ります。静電気から電磁誘導までは、電荷や磁束が空間で何をしているかを見てきました。直流回路では見る場所が変わります。部品をつないだ道すじの上で、電流がどう分かれ、電圧がどう配られるか。ここで使う式そのものは V=IR を中心にごく少数ですが、どの式がどんな条件のときに使えるのかを押さえておかないと、少し形を変えられただけで手が止まります。この記事は、その条件のほうに重心を置いて書いています。

この記事で押さえること

  • オームの法則はすべての部品で成り立つ法則ではない。成り立つ素子と、成り立たない素子がある。
  • R=ρl/S は、断面が一様で、電流が断面全体を一様に流れるときの式。
  • 温度係数 α は基準温度とセット。同じ銅でも、0℃基準と20℃基準では値が違う。
  • 分圧の公式は途中で電流が分岐しないときだけ。負荷をつないだ瞬間に成り立たなくなる。
  • 分流の「相手の抵抗ぶんの…」という形は2本のときだけ。3本以上ならコンダクタンスで考える。
  • 電力の3つの式は、何が共通しているかで選ぶ。直列なら電流、並列なら電圧が共通している。
  • 電源には内部抵抗がある。だから電流を取るほど端子電圧は下がる。

理論科目がどの範囲から出るかは、電気技術者試験センターが試験概要で公表しています。そこに並ぶ4つの区分のうち、直流回路は「電気回路」の入口にあたります。ただし区分ごとの問題数が決まっているわけではなく、回によって配分は動きます。だからこの記事では「直流回路は毎回何問」という言い方をしません。どんな形で問われるかを知りたければ、同センターが公表している本番の問題を直接見るのが早道です。

計算を始める前に決めておくこと

回路の問題を解くとき、私たちは無意識にいくつかの理想化をしています。それを言葉にしておくと、「この問題では何を無視してよいのか」が自分で判断できるようになります。

置いている前提 外れるとどうなるか
導線の抵抗は0
図の線はただの接続
実際の電線には抵抗があり、電圧降下と発熱が出る。長い配線ではここが主役になる(この記事の計算例1)
電源は理想
何 A取っても電圧が変わらない
実際は内部抵抗があるので、電流を取るほど端子電圧が下がる(この記事の計算例4)
定常状態
スイッチを入れて十分たった後
入れた直後はコンデンサやコイルのせいで値が時間とともに動く。それを扱うのが過渡現象
抵抗値は一定
温度も電圧も変わらない
電熱線や電球は熱くなると抵抗が増える。問題文に「抵抗一定とする」と断ってあるのはこのため

問題文の「理想電源」「抵抗値は一定とする」「導線の抵抗は無視する」という一文は、飾りではありません。どの理想化を許しているかの宣言です。ここを読み飛ばすと、実際には成り立たない条件で計算することになります。

電流・電圧・電位|向きと基準を先に決める

電流は「決めた向きに対して」正か負か

電流 I[A]は、ある断面を1秒あたり通り抜ける電荷の量です。1 A=1 C/s。向きは正の電荷が動く向きと決められていて、金属の中で実際に動いている電子は、その逆向きに進みます。歴史的な取り決めが先にあって、あとから電子が見つかったための食い違いです。計算では決めた向きのほうだけを使えばよいので、実害はありません。

枝分かれのある回路では、どちらに流れるか分からない枝が出てきます。そのときは向きを仮に決めて記号を置き、答えが負になったら「仮定と逆向きだった」と読みます。この手続きがそのまま次のテーマのキルヒホッフの法則につながります。

電圧は2点の差、電位は基準からの高さ

電位[V]は「基準点からどれだけ高いか」、電圧(電位差)は「2点の高さの差」です。電位は基準を決めないと値が言えませんが、電圧は基準によらず決まります。回路図の接地記号は、たいてい「ここを0 Vとする」という宣言です。

抵抗での符号の付け方。抵抗は電気を消費する側なので、電流が流れ込む端子のほうが電位が高くなります。電流の向きに沿って進むと IR だけ電位が下がる、と覚えておくと、あとで一周して式を立てるときに迷いません。電池は逆に、負極から正極へ進むと電位が上がります。

オームの法則|成り立つ素子と、成り立たない素子

オームの法則

V=IR [V]=[A]×[Ω]

同じ式を I=V/R、R=V/I とも書く。温度などの条件が変わらないあいだ、V と I が比例する素子について成り立つ。

注意してほしいのは、これがすべての部品に当てはまる自然法則ではないことです。エネルギー保存則のような「必ず成り立つもの」ではなく、「電圧と電流が比例するという、その素子の性質」を述べた式です。比例する素子をオーム性(線形)素子と呼びます。

素子の例 V と I の関係
金属の抵抗器
炭素皮膜、金属皮膜など
温度が変わらなければほぼ比例する。試験で「抵抗」と書かれたらこれ
白熱電球のフィラメント
電熱線も同じ傾向
点灯すると高温になり抵抗が大きくなる。冷えている状態(冷間)の抵抗は、定格点から求めた値よりずっと小さい
ダイオード
整流に使う半導体
まったく比例しない。片方向にしか流れず、順方向でも電圧がある値を超えてから急に流れ出す(半導体と電子回路)
サーミスタ
温度センサに使う
温度で抵抗が大きく変わる。NTC形は温度が上がると抵抗が下がる(負の温度係数)

「定格100 V・500 Wの電熱器」のような素子は、定格点でのふるまいから抵抗を1つ決めて、あとは一定とみなすという扱いをします。R=V2/P で求めた値がそれです。ただしこれはその1点での等価的な値であって、電圧を下げれば温度が下がり、実際の抵抗も変わります。試験問題が「抵抗値一定の理想抵抗とみなす」とわざわざ書くのは、この断りを入れているからです。

抵抗は材質と形で決まる

導体の抵抗(条件つき)

R=ρl/S [Ω]

ρ=抵抗率[Ω・m]、l=長さ[m]、S=断面積[m2]。断面が一様で、電流が断面全体を一様に流れることが前提。

長ければ抵抗は大きく、太ければ小さい。ここまでは直感どおりです。見落としやすいのは前提のほうです。直流なら電流は断面全体をほぼ一様に流れますが、交流になると表皮効果で外側に偏るため、同じ電線でも実効的な抵抗は直流より大きくなります。周波数が高いほど、電線が太いほど、この差は開きます。この記事の式が直流に限られるのはそのためです。

抵抗率の逆数 σ=1/ρ を導電率[S/m]といいます。抵抗の逆数として定めるコンダクタンス G=1/R[S]と混同しやすいので、材料の性質(導電率)か、部品の性質(コンダクタンス)かで区別してください。

よく出てくる材料の目安

材料 20℃付近の抵抗率のおおよその値と特徴
軟銅 およそ 1.7×10−8 Ω・m。屋内配線の標準。加工しやすく接続も容易
アルミニウム およそ 2.7×10−8 Ω・m。銅の1.5倍ほど抵抗率が高いが、密度が銅の約3分の1なので、同じ抵抗を軽く作れる。架空送電線に使われる理由
鉄 銅の数倍。導体としては不利だが、強度を受け持たせる用途がある
ニクロム 銅の数十倍。わざと抵抗を大きくして発熱させるための合金。電熱器のヒータ線

値は純度・加工の程度・温度で変わります。ここでは桁と大小関係をつかむための目安として挙げています。材料そのものの性質は電気材料の種類と特性で扱います。

計算例1|電線の抵抗と電圧降下

設定。分電盤から 40 m 離れた場所へ、断面積 5.5 mm2 の銅線で 12 A を送ります。抵抗率は 1.68×10−8 Ω・m、電源電圧は 100 V の単相2線式とします。

①電流が通る長さは往復。行きと帰りの2本を通るので、

l=40×2=80 m

②断面積を m2に直す。1 mm2=10−6 m2 なので、

S=5.5×10−6 m2

③抵抗。

R=1.68×10−8×80/(5.5×10−6)

=0.244 Ω

④電圧降下と損失。

電圧降下=IR=12×0.244=2.93 V

電線での損失=I2R=122×0.244=35.2 W

読み方。負荷の手前で 2.93 V 失われるので、100 V のつもりでも負荷には 97 V ほどしか届きません。しかも 35.2 W が電線を温めるだけに使われています。同じ条件で 8 mm2 に太くすると R=0.168 Ω、電圧降下は 2.02 V、損失は 24.2 W に下がります。断面積に反比例するので、太さを選ぶことがそのまま電圧降下と損失を選ぶことになります。

どこまで下がってよいのか。電気事業法施行規則第38条は、電気を供給する場所で標準電圧100 Vなら101 Vの上下6 Vを超えない値、200 Vなら202 Vの上下20 Vを超えない値に維持すべきことを定めています。これは供給する側が守る値で、建物の中の配線でどれだけ下げてよいかを直接決めたものではありません。屋内側の電圧降下の目安は民間の規程で示されるので、実務ではそちらを確認します。送配電の規模で電圧降下を扱うと送電の電気的計算や配電計算の話になります。

温度が変われば抵抗も変わる

抵抗の温度変化(基準温度つき)

R2=R1{1+α1(t2−t1)} [Ω]

α1 は温度 t1 を基準としたときの温度係数[1/K]。0℃基準なら Rt=R0(1+α0t) という見慣れた形になる。

多くの参考書は Rt=R0(1+αt) だけを載せますが、これは0℃を基準にした特別な場合です。基準温度が変われば α の値も変わります。銅の場合、0℃基準ではおよそ 0.00427、20℃基準ではおよそ 0.00393[1/K]です。「銅の温度係数は0.004」と1つだけ覚えていると、どちらの基準の問題かで答えがずれます。問題文に「20℃における抵抗が…」とあれば、20℃基準の値を使う場面です。

銅なら、基準を気にせず使える形がある

銅の抵抗比(便利な形)

R2/R1=(234.5+t2)/(234.5+t1)

銅の抵抗を温度について直線で外挿すると、およそ −234.5℃ で0になる。その点からの「高さの比」で読む形。

この形なら基準温度を気にする必要がありません。2つの温度をそのまま入れるだけで比が出ます。ただし直線で近似した結果なので、234.5 という数字は銅の種類によって多少変わりますし、極端な低温・高温では直線からずれます。常温付近で使う近似だと理解しておいてください。

計算例2|巻線の温度を、抵抗から測る

設定。電動機の銅巻線の抵抗が、運転前(20℃)に 0.250 Ω、運転して温度が落ち着いたときに 0.295 Ω でした。このときの巻線の温度を求めます。

①比を作る。

R2/R1=0.295/0.250=1.18

②銅の式に入れる。

234.5+t2=(234.5+20)×1.18

=254.5×1.18=300.3

t2=300.3−234.5=約66℃

③温度上昇。66−20=46 Kほど上がったことになります。温度の「差」を書くときは、℃ではなく K を使うのが正式です。

なぜこんなことをするのか。回転している巻線に温度計は当てられません。しかし抵抗なら端子で測れます。抵抗が温度で変わるという性質を、逆に使って温度を知る——これが抵抗法と呼ばれる測定です。巻線の温度上昇は絶縁物の寿命に直結するので、実務でも試験でもよく出てきます。20℃基準の係数を使って検算すると 0.250×{1+0.00393×46}=0.295 Ω となり、こちらの式でも一致します。

合成抵抗とコンダクタンス

直列は抵抗の和、並列はコンダクタンスの和

合成抵抗

直列:R=R1+R2+…

並列:1/R=1/R1+1/R2+…

並列は G=G1+G2+… と書くと足し算になる。2本だけなら R=R1R2/(R1+R2)(和分の積)。

「和分の積」が使えるのは2本のときだけです。3本を一度にこの形で計算することはできません。3本なら、2本ずつ2回に分けるか、コンダクタンスの和を取ってから逆数にします。試験で3本の並列が出たとき、和分の積を3つに拡張しようとして間違える——これは実際によくある失敗です。

コンダクタンスで考えると、並列が足し算になる理由がそのまま見えます。コンダクタンスは「電流の流れやすさ」なので、道を並べれば流れやすさが素直に加わるわけです。

検算に使える性質

つなぎ方 共通するもの・分かれるもの・合成値の目安
直列 電流が共通/電圧が分かれる
合成抵抗はいちばん大きい抵抗より大きい
並列 電圧が共通/電流が分かれる
合成抵抗はいちばん小さい抵抗より小さい

この2行は、答えが出た直後の検算にそのまま使えます。並列にしたのに合成抵抗が元の抵抗より大きくなっていたら、その時点で計算が違います。同じ値 R を N 本並列にすると R/N になる、という特別な場合も覚えておくと速いです。

分圧と分流|どちらも「条件つき」の公式

分圧が成り立つのは、途中で電流が分岐しないとき

分圧(直列・分岐なし)

V1=V×R1/(R1+R2) [V]

分子は自分の抵抗。両方に同じ電流が流れていることが前提。

なぜ自分の抵抗が分子に来るのか。電流が共通だからです。共通の電流を I とすれば V1=IR1、V=I(R1+R2)。割り算すれば I が消えて上の形になります。公式を覚えるより、この2行を書けるようにしておくほうが確実です。

ここがいちばん狙われるところ。分圧回路の中点に負荷をつないだ瞬間、この公式は成り立たなくなります。負荷にも電流が流れるので、2つの抵抗を流れる電流が同じではなくなるからです。正しくは、下側の抵抗と負荷をまず並列合成してから分圧します。その結果、出力電圧は無負荷のときより必ず下がります。「負荷をつないだら電圧が下がった」は故障ではなく、この式どおりの動作です。

分流は、2本のときと3本以上で形が違う

分流

2本のとき:I1=I×R2/(R1+R2)

何本でも:Ik=I×Gk/(G1+G2+…)

2本の式の分子が相手の抵抗になるのは、コンダクタンスの比を抵抗で書き直した結果。

下の式が本来の形です。電圧が共通なので、電流は流れやすさ(コンダクタンス)の比で分かれます。これを2本の場合に限って抵抗で書き直すと、G1/(G1+G2)=(1/R1)/(1/R1+1/R2) の分母分子に R1R2 を掛けて、R2/(R1+R2) になります。「相手の抵抗」という覚え方は、この計算の結果に付けられたあだ名にすぎません。だから3本になると通用しなくなります。

  分子に来るもの と、その理由
分圧
直列
自分の抵抗。電流が共通なので、抵抗が大きいほど大きな電圧がかかる
分流
並列・2本
相手の抵抗。電圧が共通なので、抵抗が小さいほど大きな電流が流れる

迷ったときは公式を思い出そうとせず、「大きいほうにたくさん行くのはどっちだ」と考えてください。電圧は抵抗の大きいほうに、電流は抵抗の小さいほうに多く行きます。分子を逆にした答えは、たいていこの大小関係に反するので、その場で気づけます。コンデンサの直列では電圧の分かれ方が逆(容量が小さいほうに大きな電圧)になるので、あわせて見比べておくと記憶が整理されます。

計算例3|直並列を1つにまとめ、電力で検算する

設定。理想直流電源 36 V に、6 Ω の抵抗を直列につなぎ、その先に 24 Ω と 8 Ω の並列回路をつなぎます。導線の抵抗は無視します。

①いちばん内側から合成する。

R並=24×8/(24+8)=192/32=6.0 Ω

R全=6+6.0=12.0 Ω

②全体の電流。

I=36/12.0=3.0 A

③電圧の配分。直列の 6 Ω と並列部分の合成がたまたま同じ 6 Ω なので、半分ずつに分かれます。

どちらも 3.0×6=18 V

④枝の電流に戻す。並列部分には 18 V がかかっているので、

I24=18/24=0.75 A、I8=18/8=2.25 A

和は 0.75+2.25=3.0 A で全電流と一致

⑤コンダクタンスでも同じ答えになるか。

G24=1/24、G8=3/24、和は 4/24=1/6 S

I24=3.0×(1/24)/(1/6)=3.0×0.25=0.75 A

⑥電力で検算する。ここまでの答えが正しければ、電源が出す電力と、各抵抗が消費する電力の和は一致するはずです。

電源=36×3.0=108 W

直列の6 Ω=3.02×6=54 W

24 Ω=182/24=13.5 W、8 Ω=182/8=40.5 W

和=54+13.5+40.5=108 W 一致

この⑥をやるかどうかで、正答率が変わります。枝電流の和だけでなく電力の和まで確かめると、電圧の配分を取り違えた誤りも拾えます。分流で分子を逆にしていた場合、電流の和は3.0 Aのままでも電力の和は合わなくなるからです。

電力・電力量・ジュール熱

直流の電力(3つの形)

P=VI=I2R=V2/R [W]

後ろの2つは V=IR を代入しただけ。したがって後ろの2つは、オームの法則が成り立つ素子にしか使えない。

3つとも同じ式なので、どれを使っても同じ答えになります。ではどう選ぶか。「何が共通しているか」で決めます。

使う場面 選ぶ式と理由
直列の素子ごとの電力 P=I2R。電流が共通なので、抵抗が大きい素子ほど多く発熱する
並列の枝ごとの電力 P=V2/R。電圧が共通なので、抵抗が小さい枝ほど多く消費する
電源が出す電力 P=VI。端子電圧と電流が分かっていればよく、中身の構成を問わない

「電圧を下げたら電力はどうなるか」を問われたときは、何が一定なのかを先に決めてください。抵抗が一定なら P=V2/R なので電圧の2乗に比例します。電圧が0.8倍なら電力は0.64倍です。電力が電圧に比例すると考えてしまうのが、よくある取り違えです。

電力量とジュール熱

電力量と熱量

W=Pt [J]=[W・s]

Q=I2Rt [J](ジュールの法則)

1 kWh=1,000 W×3,600 s=3.6×106 J=3.6 MJ

単位の取り違えがそのまま失点になるところです。秒で計算するのか、時間で計算するのか。Jで答えるなら時間は秒に、kWhで答えるなら電力をkWに、時間をhに直します。30分は0.5 hであり1,800 sでもありますが、この2つを同じ式に混ぜてはいけません。

抵抗で消費された電力は、すべて熱になります。これがジュール熱です。コイルやコンデンサが蓄えたエネルギーはあとから取り出せますが、抵抗が熱にしたぶんは戻ってきません。この違いは、交流回路で有効電力と無効電力を分けるときの出発点になります(交流電力と力率改善)。

電源の内部抵抗と端子電圧

内部抵抗のある電源

V=E−Ir [V]

E=起電力(電流を取らないときの端子電圧)、r=内部抵抗、V=端子電圧。r が一定とみなせる範囲での式。

電池も発電機も、内部にわずかな抵抗を持っています。だから電流を取り出すほど、端子で測れる電圧は下がります。スマートフォンの充電が進むと電圧の見え方が変わるのも、車のセルモータを回した瞬間にヘッドライトが暗くなるのも、この式で説明できます。Ir のぶんが電源の中で失われているからです。

計算例4|端子電圧・効率・短絡電流

設定。起電力 24.0 V、内部抵抗 0.30 Ω の蓄電池に、2.70 Ω の負荷をつなぎます。内部抵抗は一定とします。

①電流。内部抵抗と負荷は直列です。

I=24.0/(0.30+2.70)=24.0/3.00=8.00 A

②端子電圧。

V=24.0−8.00×0.30=24.0−2.4=21.6 V

負荷側から見ても 8.00×2.70=21.6 V で一致

③電力の行き先。

電池が発生=24.0×8.00=192 W

負荷=21.6×8.00=172.8 W

内部で熱に=8.002×0.30=19.2 W(172.8+19.2=192 W)

④効率。

172.8/192=0.90=90%(R/(R+r) と同じ)

⑤もし端子を短絡したら。R=0 とすると I=24.0/0.30=80 A。内部抵抗が小さい電源ほど短絡電流は大きくなります。蓄電池の短絡が危険なのは、この電流が一気に流れて発熱するからです。実際には端子や配線の抵抗、電池の化学的な限界も効くので、この値は上限の見積もりです。

負荷を重く(R を小さく)すると何が起きるか。電流は増えますが端子電圧は下がり、効率 R/(R+r) も下がります。では負荷が受け取る電力がいちばん大きくなるのはどこか——これが最大電力の条件の話で、直流回路の解析でテブナンの定理と一緒に扱います。効率が最大になる点と、取り出せる電力が最大になる点は同じ場所ではない、というのがそこでの要点です。

ビルメンの現場では、この式がどこに出てくるか

  • 絶縁抵抗の測定。電気設備技術基準(省令)第58条は、低圧の電路の絶縁抵抗を、使用電圧300 V以下で対地電圧150 V以下なら 0.1 MΩ 以上、同じ300 V以下でもその他の場合は 0.2 MΩ 以上、300 Vを超えるものは 0.4 MΩ 以上と定めています。ここでオームの法則を使うと意味が見えます。対地電圧100 Vの回路で絶縁抵抗がちょうど 0.1 MΩ なら、漏れ電流は 100/(0.1×106)=1 mA。この1 mAという値が、区切りの基準として置かれているわけです。法令面の詳しい整理は電気設備技術基準・総則と電路の絶縁にあります。
  • 幹線の太さを決める。計算例1のとおり、電線の抵抗は長さに比例し断面積に反比例します。遠いところへ大きな電流を送るほど、電圧降下と損失が効いてきます。過電流遮断器との関係は電気使用場所の施設で扱います。
  • 電熱機器の容量計算。ヒータやインバータの消費電流を I=P/V で見積もり、分岐回路の容量と照らします。電熱の考え方そのものは照明と電熱へ。
  • 測定器の中身。電流計に並列につなぐ分流器、電圧計に直列につなぐ倍率器は、どちらも分流・分圧そのものです(電気計測と測定器)。「なぜ電流計は並列につないではいけないのか」も、内部抵抗が小さいことと短絡電流の話で説明がつきます。
  • 直流機の理解。電機子回路は「起電力+内部抵抗」の形そのものです。端子電圧と誘導起電力の差を電機子抵抗が受け持ちます(直流機の構造と原理)。

理解度チェック

答えを選んでから解答を開いてください。選ばなかった選択肢が、なぜ違うのかまで確かめると定着します。

確認1|同じ導線を引き伸ばしたら

抵抗が 3.0 Ω の一様な導線がある。この導線を体積を変えずに均一に引き伸ばして、長さをちょうど2倍にした。温度は変わらないものとすると、引き伸ばした後の抵抗はいくらか。

(1)1.5 Ω (2)3.0 Ω (3)6.0 Ω (4)12 Ω (5)24 Ω

確認2|3本の並列

12 Ω、24 Ω、8 Ω の3つの抵抗を並列に接続し、並列回路全体へ 6.0 A を流した。24 Ω の抵抗に流れる電流と、3本ぜんぶで消費する電力の正しい組合せはどれか。

(1)1.0 A、144 W (2)1.0 A、24 W (3)2.0 A、144 W (4)3.0 A、864 W (5)2.0 A、288 W

確認3|温度係数の基準

ある銅巻線の抵抗は、20℃で 50.0 Ω である。20℃を基準とした銅の抵抗温度係数を 0.00393[1/K]とするとき、75℃における抵抗はおよそいくらか。

(1)50.0 Ω (2)55.5 Ω (3)60.8 Ω (4)61.7 Ω (5)64.7 Ω

まとめ

  • オームの法則は素子の性質であって、すべての部品に成り立つ法則ではない。電球・ダイオード・サーミスタは比例しない。
  • R=ρl/S は一様な断面を電流が一様に流れるときの式。交流では表皮効果で崩れる。
  • 温度係数は基準温度とセット。銅なら (234.5+t) の比で書くと基準を気にせずに済む。
  • 並列はコンダクタンスの和。和分の積は2本のときだけの近道。
  • 分圧は分岐がないときだけ。負荷をつなげば、先に並列合成してから分圧する。
  • 電力の3式は何が共通かで選ぶ。直列は I2R、並列は V2/R。
  • 答えが出たら電流の和と電力の和で検算する。どちらも合えば、配分を取り違えていない。
  • 電源には内部抵抗がある。V=E−Ir。電流を取るほど端子電圧は下がる。

手を動かして確かめる

この記事で引いた資料は2026年9月20日に確認しました。第58条と第38条はe-Gov法令検索に載っている条文そのもの、単位の定義はBIPMのSI文書、科目の区分は電気技術者試験センターの公表資料によります。計算例と確認問題に出てくる寸法・電流・抵抗は、途中の数字が追えるようこちらで決めた値です。特定の製品や現場の実測値ではないので、実物に当たるときは銘板と取扱説明書のほうを見てください。抵抗率と温度係数は材料の純度や加工で動く測定値ですから、本文の数字は桁と大小関係をつかむためのものと考えてください。

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

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